豆類の灰色かび病菌におけるフルアジナム剤耐性の出現とその緊急対応


[要約]
豆類の灰色かび病の基幹防除薬剤であるフルアジナム剤に耐性菌が出現した。緊急的な菜豆の防除対策としてジカルボキシイミド剤およびジエトフェンカルブ・チオファネートメチル剤を用いた防除体系を示した。
北海道立十勝農業試験場・研究部・病虫科
[連絡先]0155-62-2431
[部会名]生産環境
[専門]作物病害
[対象]豆類
[分類]指導
[背景・ねらい]
近年、豆類の灰色かび病基幹防除薬剤であるフルアジナム剤に防除効果が低下する現象がみられた。そこで本剤に対する灰色かび病菌の感受性検定を行ったところ、耐性菌の出現が明らかになったので、併せて菜豆の灰色かび病および菌核病の防除体系について緊急に検討した。
[成果の内容・特徴]
  1. 1996年からフルアジナム剤の灰色かび病に対する防除効果が低下してきた(表1)。
  2. 十勝支庁管内86圃場から分離した344菌株について、フルアジナム剤に対する感受性検定を行ったところ、弱耐性菌および強耐性菌が検出された(図1図2)。
  3. インゲンマメ灰色かび病の重点防除時期は開花始め5〜7日後とその10日後(7月下旬)と考えられ、この間に散布する薬剤としてジカルボキシイミド系剤とジエトフェンカルブ・チオファネートメチル剤が有効と考えられた(表2)。開花始め5〜7日後の散布において、前者は菌核病に対しても防除効果が高く、後者は菌核病の発生が少なく炭そ病の多発圃場で有効と考えられる。なお、8月に入っても低温・多雨が続く時には、灰色かび病が多発することも考えられるので、前二者と異なる作用機作を持つ薬剤を8月上旬に散布する。
  4. 菌核病の発生が多いときには8月上旬の薬剤散布も必要である。
  5. ジカルボキシイミド系剤は散布後に同剤耐性菌の比率が増加し、ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル剤も耐性菌が出現し易いとされるので、前述の防除体系は緊急の対応策であり、今後恒久的な防除体系を構築する必要がある。
[成果の活用面・留意点]
灰色かび病に対するフルアジナム剤の防除効果が劣る圃場おいて、インゲンマメ灰色かび病防除の参考に資する。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:フルアジナム剤耐性豆類の灰色かび病菌の発生とその緊急対応(指導参考)
[その他]
研究課題名:農作物病害虫診断
予算区分:  道費
研究期間: 平成9〜11年
研究担当者:田村 修、田中文夫、安岡真二

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