トマトの栄養障害診断のためのビジュアル情報


[要約]
トマトの栄養障害診断を目的に、葉身部に発生する栄養障害(15種類)の症状に関するカラー写真集(計58葉)を作成した。さらに、根群および果実(カラー写真9葉)の補助的情報を出来る限り加え、葉診断の際の便宜を図った。これにより、現場段階での迅速な栄養障害診断が可能である。
北海道原子力環境センター・農業研究科
[連絡先]0135-74-3131
[部会名]生産環境
[専門]肥料
[対象]果菜類
[分類]指導
[背景・ねらい]
従来のトマトの栄養障害診断マニュアルは、体系的に整理されておらず、カラー写真の数も少ない。そこで、現場段階におけるトマトの栄養障害診断に必要とされる葉身部の症状に関する情報をビジュアル(カラー写真)化し、根群や果実の補助的情報も出来る限り加えて体系的に迅速に診断できる手法を提示する。
[成果の内容・特徴]
  1. 水耕栽培法(「桃太郎」供試)で症状の特徴を明らかにしたトマトの栄養障害は、多量要素(N、P、K、Ca、Mg)欠乏症、微量要素(Fe、Mn、Cu、Zn、B)欠乏症および微量要素(Mn、Cu、Zn、B、Ni)過剰症の計15種類である。
  2. 栄養障害による症状の特徴を整理し、肉眼観察による栄養障害診断のための情報一覧(表1)および典型的な症状から検索するフローチャート(図1)を示す。さらに、各種栄養障害の典型的な葉身部の症状のカラー写真集(計58葉)と、葉診断の参考のために果実に発生した異常果のカラー写真9葉を提示し、診断の際の便宜を図る。
  3. トマトの地上部生育量と根群の発達程度は、生育初期からのN、P、Ca欠乏およびMn、Cu、Zn、Ni過剰条件下で著しく劣り、ついでK、Mg、Fe、B欠乏条件下で劣る。
  4. トマトの栄養障害による異常果の代表例である尻腐れ果は、Ca欠乏に多発するが、Si欠乏およびN、K過剰においても発生が認められる。また、P、Fe欠乏(Mn、Zn過剰に伴うFe欠乏も含む)では着果性が劣り、加えて果実の発育が抑制される。
[成果の活用面・留意点]
  1. 診断に当たっては、聞き取り調査結果および圃場環境等を勘案して、精度を高める。
  2. 正確に診断し得ない場合には、土壌および作物体の分析が必要である。
  3. 栄養障害の症状は「桃太郎」のものである。他品種への適応は葉形などの相違による症状の変化を考慮して利用する。

平成11年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:肉眼観察によるトマトの栄養障害診断法(指導参考)
[その他]
研究課題名:トマト、イチゴの栄養障害診断のためのビジュアル情報
予算区分:  道費
研究期間:  平成11年度(平成10年〜13年)
研究担当者:小野寺政行,小宮山誠一,小田義信
発表論文等:肉眼によるトマトの栄養障害診断法―水耕栽培による要素欠乏・過剰症状―,日本土肥講要集,第46集,2000.(掲載予定)

戻る