早生、多収の低アミロース米水稲新品種候補系統「上育433号」


[要約]
水稲「上育433号」は、北海道で中生の早に属するやや早熟で良食味の低アミロース粳種である。収量性、耐冷性、いもち病耐病性に優れる。「はなぶさ」に替えて作付けすることにより、寒地における産米の食味向上と一層の安定生産を図る。
北海道立上川農業試験場・研究部・稲作科
[連絡先]0166-85-2200
[部会名]作物
[専門]育種
[対象]稲類
[分類]普及
[背景・ねらい]
低アミロース米は、一般の粳米と比較して粘りが強く柔らかい特性を持つために、混米により食味の向上が図られ、府県においても幾つかの品種が育成されてきて、需要が急速に広がりつつある。北海道では「はなぶさ」がほぼ全道で作付けされているが、白米および炊飯米の白度が劣ることと、収量性がやや劣るために作付け面積は600ha程度と低迷している。そのため、食味形質の向上、収量性の改善した品種育成に取り組んできた。
[成果の内容・特徴]
  1. 水稲「上育433号」はAC90300/キタアケの交配組合せから選抜された中生の良食味低アミロース系統である。
  2. 出穂期・成熟期は、「はなぶさ」より1日程度早く、中生の早に属する。「彩」より出穂期が育成地で8日程度早い。
  3. 稈長は「はなぶさ」「彩」よりやや長く「ほしのゆめ」並、穂長は「はなぶさ」「彩」よりやや短く、穂数は「はなぶさ」「彩」「ほしのゆめ」より少なく、草型は偏穂数型である。
  4. 障害型耐冷性は「はなぶさ」並の“やや強〜強”であり、「彩」より明らかに優る。いもち病真性抵抗性は“Pi a,k”と推定され、葉いもち抵抗性は「はなぶさ」よりやや強い“強”、穂いもち抵抗性は「はなぶさ」並の“中”であり「ほしのゆめ」よりやや優り、「彩」より極めて優る。
  5. 収量性は「はなぶさ」よりやや優り、「彩」と比較して並からやや優る。
  6. 玄米品質は「はなぶさ」「彩」並かやや優り、検査等級は「はなぶさ」「彩」よりもやや優る。
  7. 千粒重が「はなぶさ」「彩」より軽く、厚さが「ほしのゆめ」よりは厚いが「はなぶさ」「彩」よりも薄い。
  8. 食味は「はなぶさ」よりも明らかに優り、一般粳米に混米することにより炊飯米の食味が向上するが、「彩」の食味には及ばない。
[成果の活用面・留意点]
  1. 上川(風連以南)、留萌(中南部)、空知、石狩、後志、日高、胆振、渡島および檜山の各地帯に適応し、「はなぶさ」およびその他の品種に替えて、2,000haの普及が見込まれる。
  2. 割籾の発生が多いので、斑点米や紅変米などの被害粒発生による品質低下を招かぬよう病害虫の適正な防除に努めるとともに、適期刈取りを励行する。
  3. 初期分けつ性がやや劣り、穂数確保が難しいので機械移植基準を守る。
  4. 耐冷性は強い方であるが、十分とは言えないので、冷害危険期の深水潅漑を励行する。
  5. 稈長がやや長く、耐倒伏性は十分でないので、多肥栽培はさける。
  6. 粒重が軽いので、登熟期の適正な水管理に努める。

平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:水稲新品種候補系統「上育433号」(普及奨励)
[具体的データ]
「上育433号」の特性概要
[その他]
研究課題名:超早生耐冷性品種の育成
予算区分 :補助指定
研究期間 :平成12年度(平成4年〜12年)
研究担当者:沼尾吉則、木内 均、平山裕治、前川利彦、木下雅文、相川宗嚴、菊地治己、田中一生、
      丹野 久、佐藤 毅、新橋 登、田縁勝洋、佐々木一男、吉田昌幸、前田 博、菅原圭一

戻る