ばれいしょ品種「スタークイーン」のジャガイモYモザイクウイルスえそ系統(PVY-T)感染株の病徴


[要約]
ばれいしょ品種「スタークイーン」のPVY(T,O)感染株の当代病徴は、接種葉にえそ斑点を生じるが、上葉の病徴は不明瞭である。次代病徴のうち、開花期以前に現れる単独のれん葉症状はPVY-Tの感染とは無関係であり、PVY-T感染株の主要な病徴は黄色斑紋とモザイク症状である。
北海道立北見農業試験場・生産研究部・病虫科
[連絡先]0157-47-2146
[部会名]生産環境
[専門]作物病害
[対象]いも類
[分類]指導
[背景・ねらい]
ばれいしょ品種「スタークイーン」(根育31号)は、生育期間中れん葉症状を現すため、PVY感染によるか否かが問題とされている。本研究では、れん葉症状とPVY感染の関係を検討するとともに、PVY-T感染の有無を識別するための指標となる病徴を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. 「スタークイーン」のPVY(T,O)当代感染株は接種葉にえそ斑点を生じるが、上葉の病徴は不明瞭であり、当代感染株の判別は「男爵薯」同様に容易ではない。
  2. 「男爵薯」のPVY(T,O)感染株も接種葉にえそ斑点を生じ、上葉の病徴の多くが不明瞭であるが、稀にえそを生じる株が見られる。
  3. 開花期以前の「スタークイーン」の健全株によく出現する単独のれん葉症状(PVY感染疑似症状)は、開花期以降目立たなくなることから、ウイルスの感染と無関係である。PVY-T感染株判別の指標とはならない(表1)。
  4. PVY-T保毒いも由来の「スタークイーン」の次代の主な病徴は、れん葉に黄色斑紋とモザイク症状であり、着蕾期頃から出現し、開花3週間頃まで明瞭で,その後軽微になる。病徴が不明瞭な株は「男爵薯」より少ない(表1)。
  5. PVY(T,O)保毒いも由来の「男爵薯」の次代病徴は黄色斑紋、モザイク、れん葉、えそ症状の単独または混合したもので、いずれも「スタークイーン」より軽微であり、病徴が不明瞭な株も多く見られる(表2)。
  6. PVY-T感染株から収穫した保毒いもをほ場に植え、病徴(黄色斑紋とモザイク症状)による肉眼判定とエライザ検定の比較を行った結果、供試125株中123株(98.4%)で両者の判定が一致したことから、本病徴により高い精度で「スタークイーン」のPVY-T感染の有無を識別できる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成績は「スタークイーン」の原採種ほ場におけるジャガイモYモザイク病の防除対策に活用できる。
  2. 病徴観察は日照の強い晴天時を避け、曇天時に行うとより見やすくなる。その場合、エライザ(ELISA)法又はRIPA法(平成10年度北海道農業試験会議普及奨励)を補助的に用いることにより、一層肉眼判定の精度が向上する。

平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:ばれいしょ品種「スタークイーン」のジャガイモYモザイクウイルス(PVY-T)感染の指標となる病徴(指導参考)
[その他]
研究課題名:ジャガイモそうか病総合防除法開発試験 III生物・化学的防除法の開発
      1)抵抗性検定と機構の解析 (3)根育31号におけるPVYの病徴調査
予算区分 :受託
研究期間 :平成12年度(平成11〜12年)
研究担当者:萩田孝志・向原元美
発表論文等:

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