ハウス野菜の灰色かび病の薬剤耐性菌出現とその対策


[要約]
ハウス野菜・花き類の灰色かび病(Botrytis cinerea)の薬剤耐性菌は全道に分布する。耐性菌の発生は薬剤散布方法と密接に関する。トマト灰色かび病のハウス管理による耕種的防除には、通風、灌水方法、ハウス屋根資材の選択、枯死葉や罹病茎葉の除去が重要である。
北海道病害虫防除所・予察課
[連絡先]01238-9-2080
[部会名]生産環境
[専門]作物病害
[対象]果菜類ほか
[分類]指導
[背景・ねらい]
ハウス野菜の灰色かび病の耐性菌の全道分布と発生推移を明らかにする。また、耐性菌の発生を防ぐため農薬の散布回数をできるだけ減らし、耕種的防除法を検討する。
[成果の内容・特徴]
  1. 道内における灰色かび病のジカルボキシイミド系(P:プロシミドン,I:イプロジオン)剤耐性菌の分布は、主要なハウス野菜・花き栽培地域のほぼ全域に及んでいた(図1)。ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤(G剤)に対する耐性菌もかなりの地域で認められた。
  2. 冬期間ビニールを張りっぱなしにしていたトマトハウスでは、越冬後もチオファネートメチル(T)剤、P,I剤に対する耐性菌はほとんど低下しなかった(図2)。冬期間ビニールを除去または新規ハウスでは、はじめはいずれの薬剤に対する耐性菌率とも低かったが、薬剤を1,2回散布すると耐性菌率はほぼ100%になった(図3)。
  3. I剤散布の前歴がなく感受性菌のみのハウスでは、1回散布で耐性菌の出現が認められ、散布毎に耐性菌率が増加し、その後薬剤散布しなくてもそのレベルは長期間低下しなかった。(図4)。前歴があり耐性菌が散布前から認められたハウスでは、防除効果は認められなかった。
  4. ハウストマトの灰色かび病の耕種的防除法としては、灌水方法では、マルチの下に灌水チューブを設置するのが最も有効である(図5)。風通しが悪いハウスでは灌水方法では効果がなく発病は多かった。ハウス屋根資材がキリナインのほうが夜間〜早朝の湿度を低くするため、ノービエースより発病が抑えられた(図6)。また、枯死葉や罹病茎葉の除去も有効である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本試験成績はハウス野菜栽培地域の灰色かび病防除に適用する。
  2. P,I剤に対する耐性菌が確認されていない地域のハウス、また確認された地域の新規ハウスや冬期間ビニールを除去したハウスでは、P,I剤の散布は1作期1回とする。P,I,T,G剤に耐性菌が確認された地域の新規あるいは冬期ビニール除去以外のハウスでは、それ以外の薬剤でローテーション散布を行う。なお、T剤は本病に対してはほとんど効果がない。

平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:ハウス野菜(トマト)の灰色かび病の薬剤感受性の低下に伴う対応(指導参考)
[その他]
研究課題名:総合的病害虫管理後術実証事業
予算区分 :補助
研究期間 :平成10〜12年
研究担当者:長浜 恵
発表論文等:長浜 恵ら,北海道におけるジエトフェンカルブ・チオファネートメチル剤耐性灰色かび病菌の発生,日植病報65:693,1999

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