にんじんの乾腐病(Fusarium solani)の発生状況と発病要因


[要約]
にんじんの乾腐病は北海道道南地方で多発し,主な病原菌はFusarium solaniである。本病の発生は,にんじんの生育ステージと温度,土壌水分が関わっており,播種後60〜83日の間に土壌水分が高く維持されると発病する。
北海道立道南農業試験場・研究部・病虫科
[連絡先]0138-77-8116
[部会名]生産環境
[専門]作物病害
[対象]根菜類
[分類]指導
[背景・ねらい]
にんじんの乾腐病は,道南地方で発生が多く,重要な生産阻害要因になっている。しかし,本病は,病原菌が明らかになっているものの,発生生態は不明で,防除対策が全くないのが現状である。そこで,本病の発生生態を明らかにし,防除対策の資料とする。
[成果の内容・特徴]
  1. アンケート調査:道南地方の約75%の圃場で発生し,にんじん栽培歴が長い圃場で発生頻度が高く,高水分や滞水しやすい圃場,および高温年に多発するという例が多かった。
  2. 発生状況:調査した31圃場の平均発病株率は33%で,土壌中の病原菌密度と発病株率にはゆるい正の相関があった。現地3圃場から抜取った乾腐病発病株から菌を分離した結果,約80%がF. solaniであり,もう一つの病原菌である F. avenaceumは分離されなかった。
  3. 発病要因解析:異なる土壌水分条件下でにんじんへ病原菌を接種すると,水分含量が高くなるにつれて発病が多くなった(図1)。また,ほ場容水量条件下では25℃以上では多発し,15℃〜25℃では発病は少なかった。生育中のにんじんを定期的に汚染土に移植したところ,播種49日後の株では発病発病は認められず,74日後以降の株で激しく発病した(図2)。汚染土に播種したにんじんを,灌水によって一時的に水分飽和状態にしたところ,その時期が播種後50日目頃では発病は少なく,60〜80日目では多くなり,90日目以降では発病は見られなかった(表1)。
  4. 現地の発病状況:播種60日以前のものに発病は認められず,それ以降のまとまった降雨から20〜30日後に発病が見られた。平成10年,12年の共選場におけるにんじん廃棄率は,多量の降雨の30日後に上昇しており,廃棄の主因は乾腐病によるものであった(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. ほ場の排水を良くし,排水を悪化させる管理作業(多水分時の作業等)をさける。
  2. 本病は初発後,急激に発病が増加するため,収穫適期になり次第早めに収穫する。

平成12年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:にんじんの乾腐病の発生生態(指導参考)
[その他]
研究課題名:にんじんの乾腐病の発生生態
予算区分 :道単
研究期間 :平成12年度(平成11〜12年)
研究担当者:新村昭憲
発表論文等:

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