個別型バイオガスプラントでの糞尿性状の変化と稼働エネルギ−の収支


[要約]
軽油併用コジェネレ−タを用いた個別型のバイオガスプラントにおいて、発酵に伴い有機物の分解と窒素化合物の無機化が進行するとともに、厳冬期においても稼働に関して投入エネルギ−を上回るエネルギ−が得られる。
[キーワード]
バイオガスプラント、エネルギ−収支、乳牛糞尿、温度環境
[担当](独)北海道開発土木研究所・農業開発部・土壌保全研究室
[連絡先]011-841-1117
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
最近、家畜糞尿の肥料資源としての有効利用だけでなく、エネルギ−利用の面からもバイオガスプラントが見直され、北海道では2000年からこれまでに試験研究用も含め16基のバイオガスプラントが建設された。しかし、これまでにエネルギ−収支は十分に検討されていない。そこで、北海道内の最新式のバイオガスプラントでの糞尿性状の変化と稼働に関するエネルギ−の収支を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
北海道江別市で約300頭を飼養する酪農家(町村牧場)のバイオガスプラントで、糞尿性状の変化、温度環境と稼働に関するエネルギ−収支を観測した。本プラントでのコジェネレ−タ(CG)は軽油とメタンガスの併用である。
  1. 発酵に伴い、糞尿スラリ−のpHは上昇し、乾物率、有機物含量及び揮発性脂肪酸含量は低下し、窒素化合物の無機化が進行し(表1)、液肥としての速効性が高まった。
  2. 厳冬期に気温は−10℃を下回り発酵槽温度も32〜33℃に低下する事があり(図1)、軽油併用CGのみを用いた発酵槽の加温に課題があった。
  3. バイオガス中のメタン濃度は冬季に濃度が下がった時を除き約60%で(図2)、メタンガス発生量の変動は大きかった。発電量はメタンガス発生量と類似した変動を示し、プラントでの消費電力量は発電量の9%であった(図4)。
  4. 発酵槽の温度が34℃以下になるとメタン発生量は低下した(図3)。
  5. 冬期間(11月中旬〜3月末)でプラントへの投入エネルギ−(図4上部:消費電力((1))、消費軽油((2))及びメタンガス((3)))量に対する産出エネルギ−(図4下部:発生電力((4))及び発生熱水((5)))量の割合は約60%、投入エネルギ−に占める軽油エネルギ−の割合は約20%であった。
  6. 冬期間(11月中旬〜3月末)に372GJの軽油が消費され、その間のプラントの余剰エネルギ−((4)-(1)-(2))量は210GJであった(図4)。
  7. 上記より、北海道の厳冬期でもバイオガスプラントからは稼働に関して余剰エネルギ−が得られることが実証された。今後、冬季の安定稼働技術と夏期の熱水エネルギ−の有効利用がエネルギ−的な課題である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は家畜糞尿を固液分離しない処理で、軽油併用CGを使用したバイオガスプラントで得られたものである。
  2. 本プラントでは余剰電力を隣接する牛乳工場で利用しており、近くに余剰電力を利用する施設が無い場合は、その利用が課題となる。
  3. 本プラントの消化液は近くの草地へ散布利用できる条件にある。

[その他]
研究課題名:積雪寒冷地における環境・資源循環プロジェクト
予算区分 :特別研究費
研究期間 :2000年度
研究担当者:石田哲也、石渡輝夫、岡本 隆、松田従三、福尾克也
発表論文等:岡本ら、農土誌,69,1269〜1272(2001)

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