種子プライミング処理による直播てんさいの初期生育向上と根重増加


[要約]
種子プライミング処理は、てんさい真正種子中の糖含有率および総デンプン分解酵素活性を高める。これにより、低温下における発芽・出芽が早まり、初期生育が向上し、さらには、収穫期の根重が増加する傾向がある。
[キーワード]
プライミング処理、総デンプン分解酵素活性、糖含有率、初期生育、根重
[担当]北農研・畑作研究部・品質制御研究チーム
[連絡先]0155-62-9278
[区分]北海道農業・作物
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
直播栽培は、てんさい栽培の省力化を図る上で重要であるが、生育期間が移植栽培より短いため、収量性が劣るのが一般的である。プライミング処理は、野菜や花卉等、発芽性の劣る種子の発芽促進技術として知られ、種子メーカー段階でのてんさい種子への応用により、直播栽培の生育期間延長が期待される。そこで、てんさい種子に対するプライミング処理条件・簡易な処理方法の検討ならびに発芽促進効果、生育・収量への影響の検証を行う。
[成果の内容・特徴]
  1. てんさい種子のプライミング処理は、風乾状態の種子(果実)を含水率24%に調整し、20℃の密封容器内で5日間攪拌しながら保持する簡便法である。
  2. プライミング種子は、通風乾燥により元の風乾状態に戻すため、5℃で1年間の保存が可能であり、ペレット化等の種子加工にも適する(表1)。
  3. プライミング処理により、てんさい真正種子内の糖含有率の増加および総デンプン分解酵素活性が向上する(図1)。
  4. プライミング種子は、発芽および圃場での出芽が数日早まり、生育の前進化により初期生育量が向上する(表1)。
  5. 収量形質では、根重の増加により、糖量が向上する傾向がある(表2)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 発芽日数の長い品種・系統では、プライミング処理による発芽促進効果が大きい。発芽性の劣る有望系統への適用により、直播適性を高めることが可能である。
  2. プライミング処理の最適水分条件は、品種、ロット、種子研磨程度などにより多少変動する。厳密な処理を行うには、種子含水率24%前後での予備試験が必要である。
  3. 果実に水溶性の発芽阻害物質が含まれる場合は、事前の水洗が必要である。

[その他]
研究課題名:てんさいの直播適性種子特性の解明と生産技術の開発
予算区分 :21世紀プロ(IV系)
研究期間 :1999〜2001年度
研究担当者:六笠裕治、中野 寛、山内宏昭
発表論文等:六笠、山内(2001)育種学会・作物学会北海道談話会会報42:125-126

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