テンサイそう根病の媒介菌休眠胞子の直接観察のための蛍光染色法の改良


[要約]
土壌中のテンサイそう根病の媒介菌(Polymyxa betae)休眠胞子は、SDSによる前処理により各種蛍光色素ならびにFITC標識レクチンによって染色され、蛍光顕微鏡観察が可能となる。
[キーワード]
てんさい、そう根病、媒介菌(Polymyxa betae)、蛍光染色法
[担当]北農研・畑作研究部・環境制御研究チーム
[連絡先]0155-62-9276
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
テンサイそう根病は、媒介菌(Polymyxa betae)の土壌中での生存期間が長いため、輪作だけでは発病抑制効果が低く、また経済的に有効な防除薬剤も無い。そこで、本媒介菌の制御法を確立するためには、土壌中での本菌の休眠胞子数を正確に測定する必要がある。しかし、本菌は絶対寄生菌のため分離・培養が不可能であり、土壌を直接顕微鏡観察して菌数を測定しなければならない。そこで、従来の煩雑な直接観察法を改良するため、感度ならびに特異性の高い蛍光染色法の開発を試みる。
[成果の内容・特徴]
  1. そう根病媒介菌休眠胞子は、そのままでは各種の蛍光色素(DiOC6(3)、カルコフルオール)に染色されにくいが、染色前に2%濃度のSDS溶液に懸濁し100℃20分間処理することにより、著しく良好に染色されるようになり(図1)、土壌中からの直接観察が容易になる。
  2. 上記のSDS処理後は、FITC標識レクチンによっても染色され、特にFITC標識小麦胚芽レクチン(WGA)とヒママメレクチン(RCA120)には低濃度でも染色される(表1)。
  3. 上記のSDS処理を行っても、休眠胞子の損傷や表面構造の変化は観察されない(図2)。
[成果の活用面・留意点]
DiOC6(3)は休眠胞子の細胞質を明瞭に染色し、FITC標識レクチンは休眠胞子の表面を主に染色するため、用途により染色法を使い分ける。

[その他]
研究課題名:テンサイそう根病の媒介菌の制御法の開発
予算区分 :交付金
研究期間 :1997〜2001年度
研究担当者:佐山 充、竹中重仁、百田洋二
発表論文等:佐山ら(2000)日植病報66(3):310

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