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[背景・ねらい] |
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ばれいしょは種いもによって増殖する作物であるために、他のイネやムギ等の作物に比べ種苗の増殖率が低く、品種の需要変化に柔軟に対応することができない。また、種いもはウイルス病等の重要病害に感染し、伝搬する可能性があるため、種いもの増殖段階においてそれらの重要病害の防除に多大な労力を必要とする。このため、短期間に無病種いもを大量増殖することを可能とするMT培養生産の実用化が望まれているが、培養器内におけるMT生産能力の品種間差異については明らかにされていない。そこで、MT器内生産能力の品種間差異を明らかにし、MT培養実用化のための最適培養条件の検討を行う。 |
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[成果の内容・特徴] |
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1. |
一般的なMT生産のための培養条件(置床組織:1節苗条切片、苗条増殖期間:MS基本培地(ショ糖3%,固形培地),25℃,16時間日長,4週間、塊茎形成期間:MS基本培地(ショ糖8%,液体培地)20℃,連続暗黒下,6週間)において産出されたMTのいも数および一個重によって、国内外主要47品種系統のMT器内生産能力は、高生成能型、中間型、低生成能型の3タイプに分類される(図1)。 |
2. |
MT培養条件について、苗条増殖期間が長くなると、塊茎形成が早まり、いも数が増加する。一方、塊茎形成期間が長くなると、一個重が増加するが、いも数については、「男爵薯」などの高生成能型の品種では、いも数の変化がほとんどみられず、「農林1号」などの低生成能型の品種では、いも数が増加する(図2)。 |
3. |
MT培養条件の塊茎形成期間について、異なる3種類の日長条件(連続暗黒(0時間)、短日(8時間)、長日(16時間))下の培養では、短日条件下でいも数および一個重が最大となる(図3)。 |
4. |
低生成能型品種系統について、苗条増殖期間および塊茎形成期間の延長や塊茎形成期間における短日条件化により安定してMT生産を行うことができる。 |
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[成果の活用面・留意点] |
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1. |
MTを用いた種いもの急速増殖を必要とするほぼ全ての品種および系統に適用することができ、効率的なMT生産が可能となる。 |
2. |
MTの低温貯蔵中のカビ発生を抑えるため、MT収穫時にしっかりと風乾するなど、貯蔵に注意する。 |
3. |
通常種いもと同様、MTにおいても各品種系統に固有の休眠期間があるので、栽培に際しては、休眠明けの確認を要する。 |
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