有機物資材を利用したダイズのカドミウム吸収抑制技術


[要約]
厩肥と炭カルを併用し、有機物の持つカドミウム不溶化作用や高pH等の特性を利用することにより、ダイズのカドミウム吸収を効果的に抑制できる。また、厩肥を単独施用する場合は作条施用が優る。
[キーワード]
  ダイズ、カドミウム、厩肥、作条施用、炭カル
[担当]北農研・生産環境部・上席研究官、同・同部・土壌特性研究室
[連絡先]電話011-857-9232、電子メールkojiy@affrc.go.jp
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
カドミウム(Cd)は、高濃度で毒性を示すのみならず、低濃度において内分泌かく乱作用を持つと危惧されている物質であり、コーデックスにおいてもダイズの基準値が検討されていることから、Cd吸収抑制技術の確立が求められている。
そこで、ダイズのCd吸収に対する有機物資材施用効果を検証し、有機物を利用した効果的なCd吸収抑制技術の開発を試みる。
[成果の内容・特徴]
 
1. 北農研内のCd人工汚染土壌(枠)では、土壌有機物の多い土壌ほど全Cd含量が高いにも関わらず、交換態Cd含量及びダイズ子実Cd含量が少なく(図1)、土壌有機物はCdを不溶化する。
2. 有機物資材や炭カルを施用した淡色黒ボク土圃場の土壌pHとダイズ子実Cd含量の間には負の相関があり(図2)、土壌pHの上昇は子実Cd含量の低下をもたらす。
3. しかし、同程度の土壌交換態Cd含量において、厩肥、バーク堆肥施用ではダイズ子実Cd含量が低下するのに対し、pHの高い炭カル含有腐植酸質資材施用では交換態Cd含量が少なくなるにもかかわらず、子実Cd含量が低下しない(図3)。
さらに、ポット試験において、pHの高い厩肥、バーク堆肥だけでなく、pHの低いピートモス施用でもダイズ子実Cd含量の低下がみられ(図4)、厩肥やバーク堆肥施用による子実Cd含量の低下には、pH上昇効果以外に土壌有機物と同様に施用有機物によるCdの不溶化作用が関与している。
4. 厩肥の作条施用(20t/ha)は全面全層施用(20、40t/ha)よりダイズ地上部のCd含量を低下させる(図5)。これは、養分含量の高い厩肥の周囲での根の発達が土壌からのCd吸収の減少をもたらす要因の一つであることを示しており、厩肥の作条施用はCd吸収抑制に効果的な方法と判断される。
5. 以上の結果より、厩肥と炭カルを併用し、有機物の持つCd不溶化作用や高pH等の特性を利用することによって、Cd自然賦存土壌におけるダイズのCd吸収を効果的に抑制でき、また、厩肥を単独施用する場合は作条施用が優る。なお、土壌pHの上昇が望ましくない作物の場合はpH調整されていないピートモスのようなpHの低い資材の利用も考えられる。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 本成果は北農研内の圃場における1品種のダイズ(トヨムスメ)で得られたものであり、利用にあたっては土壌型や品種、気候条件での具体的な施用法を検討する必要がある。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 有機物資材を利用したダイズのカドミウム吸収抑制技術の開発
予算区分: 環境ホルモン
研究期間: 2001〜2002年度
研究担当者: 吉田光二、杉戸智子


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