アルストロメリアにおける新規アントシアニン


[要約]
アルストロメリアの花被に含まれる12種類のアントシアニンを分析し、このうち3種類(6−ヒドロキシシアニジン 3−マロニルグルコシド、6−ヒドロキシデルフィニジン 3−グルコシド及び6−ヒドロキシデルフィニジン 3−マロニルグルコシド)を新規アントシアニンとして同定した。
[キーワード]
  アルストロメリア、アントシアニン
[担当]北農研・作物開発部・野菜花き研究室
[連絡先]電話011-857-9304、電子メールxuanwu@affrc.go.jp
[区分]北海道農業・作物、花き
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
アルストロメリアでは他の植物では見られないA環の6位に水酸基が結合したアントシアニンが報告されている。新花色品種の育成には含有アントシアニンの解析が重要なことから、アルストロメリア花被に含まれる未知アントシアニンの単離と同定を行う。
[成果の内容・特徴]
 
1. アルストロメリア‘ウエストランド’(赤紫色)、‘ティアラ’(赤色)の花被には、12種類以上のアントシアニンが存在し(図1)、標品との比較の結果、9種類は既知アントシアニンであり(表1)、他の3種類は未知アントシアニンであった。
2. 3種類の未知アントシアニンについてFAB-MSおよびH-NMRスペクトル分析を行った結果、6-ヒドロキシシアニジン 3-マロニルグルコシド(6-hydoroxycyanidin 3-O- (6-O-malonyl-β-D-glucopyranoside))、6-ヒドロキシデルフィニジン 3-グルコシド(6 -hydroxydelphinidin 3-O-β-D-glucopyranoside)、6-ヒドロキシデルフィニジン 3-マロニルグルコシド(6-hydroxydelphinidin 3-O-(6-O-malonyl-β-D-glucopyranoside))と同定され、これらは何れも他の植物では報告のない新規アントシアニンである(図2)。
3. 以上の結果、‘ウエストランド’、‘ティアラ’の花被に存在するアントシアニンのうち12種類が明らかになり、これらは4種類のアグリコン(シアニジン、デルフィニジン、6-ヒドロキシシアニジン、6-ヒドロキシデルフィニジン)の3位の水酸基に、グルコース、ルチノース、マロニルグルコースが結合したアントシアニンである(表1)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. アントシアニン分析の基礎データとして、他の植物にも利用することができる。
2. 各アントシアニン含量と花色との関係の解明が進み、アルストロメリアの新花色品種の育成に活用することができる。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: アルストロメリアにおける有用特性の探索及び素材の選抜
予算区分: 交付金
研究期間: 2001〜2005年度
研究担当者: 村田奈芳、篠田浩一、立澤文見(北海道拓殖短大)、斎藤規夫(明治学院大)、鴫原 淳(星薬科大)、本多利雄(星薬科大)
発表論文等: 1.Tatsuzawa et al. (2001) Heterocycles, 55(6):1195-1199.
2.Tatsuzawa et al. (2002) Heterocycles, 57(10):1787-1792.


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