集中型ふん尿処理システム利用酪農家のふん尿処理費用節減可能額


[要約]
草地型酪農地帯で個別完結型ふん尿処理を行う酪農家の集中型ふん尿処理システム利用によるふん尿処理費用節減可能額を、利用前時点のふん尿処理費用から試算すると、成牛換算の年間1頭あたり16.0千円になる。
[キーワード]
  酪農経営、集中型ふん尿処理、ふん尿処理費用、節減可能額
[担当]北農研・総合研究部・動向解析研究室、開土研・農業開発部・土壌保全研究室
[連絡先]電話011-857-9308、電子メールukawa@affrc.go.jp
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
草地酪農専業地帯では家畜ふん尿の広域利用が困難であることから、個別完結型のふん尿処理が主流であったが、そのことが労働力不足の酪農経営において不適切なふん尿処理・利用を引き起こす要因の1つになっている。そのために、個別農家におけるふん尿処理作業時間の節減が可能な集中型ふん尿処理システムが推進されている。ここでは、ふん尿処理に関わる畜舎外作業を請け負う集中型ふん尿処理システムを対象に、このシステムを利用しようとする酪農家におけるふん尿処理費用節減可能額をシステム利用前のふん尿処理の実態から算出し、集中型ふん尿処理システムの設計に資する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 別海町に建設された集中型ふん尿処理システム(バイオガスプラント)の利用予定農家は、牛舎型式の異なるフリーストール(FS)4戸とスタンチョン(ST)7戸に区分できる(表1)。ふん尿処理方式はFS農家ではラグーンを使ったスラリー処理、ST農家では堆肥盤による堆肥処理が多い。
2. 2000年11月〜2001年2月までの冬期120日間の作業日誌からふん尿処理作業時間をみると、実作業時間(組作業時間)では牛舎形式による差はみられなかったが、延作業時間ではFS農家がST農家の約3倍になっている(図1)。
3. ふん尿処理に要した経営費として、地域で標準的なふん尿処理機械装備を想定し(表2)、集中型ふん尿処理システム利用により節減されうる機械の減価償却費と修理費、電気料、燃料費および作業委託費について整理すると、1戸あたりFS農家では467万円、ST農家では251万円になる(図2)。FS農家はST農家の約1.9倍になるが、成牛換算1頭あたりではそれぞれ4万円と3万円になる。
4. 酪農家の集中型ふん尿処理システム利用によるふん尿処理費用節減可能額を、利用前時点でふん尿処理に要した経営費のうちの利用後に節減可能な費用とすると、1戸あたりFS農家では175万円、ST農家では108万円になり、成牛換算年間1頭あたりではFS農家14.9千円、ST農家13.3千円になる(図2)。同様に、ふん尿処理作業時間では畜舎外作業や散布作業などの同節減可能時間はFS農家0.6時間、ST農家1.3時間になる(図1)。ここで算出した経営費と労働費(1時間あたり2千円)の合計は、成牛換算年間1頭あたりFS農家では16.1千円、ST農家では15.9千円、平均では16.0千円と試算される。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 集中型ふん尿処理システムの収益構造や利用料金を設計する際に活用できる。
2. 草地型酪農地帯における個別完結型ふん尿処理農家を対象としている。
3. ここで想定した集中型ふん尿処理システムでは、ふん尿の搬入や堆肥・消化液の搬出・散布をコントラクタに委託することとしている。システム利用前時点におけるふん尿処理の実態はほとんどの農家が「家畜排せつ物法」に適合していないが、ここで算出したふん尿処理費用節減可能額は利用前時点と同程度のふん尿処理・利用を行う場合の推定額である。なお、ふん尿処理施設の節減については考慮していない。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 寒冷地における集中型バイオガスシステムの経済性の解明
予算区分: 受託(開土研・資源循環)
研究期間: 2001〜2004年度
研究担当者: 鵜川洋樹、小野 学(開土研)、石渡輝夫(開土研)
発表論文等: 小野・鵜川(2002)農業経営研究 40(1):57-62.


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