新興トマト産地内における収益格差の要因と経営改善策


[要約]
道央水田地帯の新興トマト産地を対象に生産者間の収益性の格差について検討した。トマト作導入間もない生産者は経験者に比べて10a当たり40万円の収益低下が生じているが、これは、取引価格の低迷と栽培管理の基本技術を励行していないことによる。
[キーワード]
  新興産地、基本技術の励行、稲作・トマト複合経営
[担当]中央農試・生産システム部・経営科、華野菜セ・技術体系化チーム
[連絡先]電話01238-9-2286
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
道央水田地帯では、稲作の収益性の低下に伴い新たな野菜産地が形成されつつある。しかし、このような産地では生産者間の収益性格差が大きく、産地として不安定な状態にある。そこで、新興トマト産地の問題点を整理し、稲作・トマト複合経営の改善方向を提示した。
[成果の内容・特徴]
 
1. 道央圏におけるトマト産地について比較したところ、面積当たりの販売額は、他産地と新興のA産地との間に差が生じていた(表1)。また、早期から産地化に取り組んだ産地ほど、生産者間のばらつきが小さかった。
2. A産地内で取引価格が低迷している生産者は、規格内収量が少ない傾向にあり(図1)、トマト作の導入間もない生産者(栽培経験2年目まで)に多かった。その結果、10a当たり販売額は、経験者と導入間もない生産者の間に40万円以上の差が生じていた。
3. A産地内の生産者を対象に、普及センターが指導している基本技術の実施状況や販売成果を調査し、数量化III類及びクラスター分析を用いて、A産地における生産農家のグループ分けを行った。
4. A産地内における販売価格の相違からみた栽培管理の特徴を整理すると(表2)、取引価格が上位に位置する生産者は、(1)普及センターが紹介した施肥量を基準にしている、(2)ホルモン剤の濃度を温度によって変えている、(3)草勢を見ながら追肥時期を決めている、(4)下位段において障害果の摘果を徹底している、(5)果実の通気性が確保されている、(6)ハウス内に雑草が認められない。一方、産地内で取引価格が著しく低迷していた生産者ほど、(1)下位段において障害果の取り残しが目立つ、(2)果実が葉で隠れている、(3)雑草が目立つ、結果となった。すなわち、産地内で取引価格の下位層に位置する生産者ほど、基本技術を励行していないために、規格外品の出荷率が高くなり、取引価格の低迷を招いていた。
5. ハウスを増棟する際に必要なトマト販売額を試算した結果、10a当たり200万円の販売額を確保しなければならないことが明らかとなった(表3)。したがって、10a当たりの販売額が200万円以上である生産者は、ハウスの増棟によるトマト部門所得の増加が期待できるが(図2)、200万円以下の生産者は、まず基本技術を励行することで、面積当たりの所得を高めることが不可欠であるものと判断された(図2)。
[成果の活用面・留意点]
  トマト産地の振興に向けて生産者の改善方向を検討する際に活用できる。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 道央水田地帯における施設園芸作物導入の経営・技術指針
予算区分: 道費
研究期間: 2000年〜2002年度
研究担当者: 白井康裕、大久保進一、岸田幸也、兼平修、北畠国昭、田中里枝


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