加工用多収水稲新品種候補系統「上育438号」


[要約]
水稲「上育438号」は加工用の中生種で、作付け面積の減少した「あきほ」に替えて作付けを行う。「あきほ」と比較して冷凍ピラフの加工適性に優れ、耐冷性が強く、いもち病抵抗性が強く多収である。
[キーワード]
  水稲、加工用、中生種、耐冷性、いもち病抵抗性、多収
[担当]上川農試・研究部・稲作科
[連絡先]電話0166-85-2200、電子メールnumaoys@agri.pref.hokkaido.jp
[区分]北海道農業・作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
「あきほ」は加工適性に優れ実需者の要望が高いが、低収の為作付け面積が減少しており、要望に十分には応じられない状況である。そのため、加工用として粘りの少ない多収の品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 「上育438号」は平成6年に耐冷多収系統の「空育151号」を母、耐冷・良食味系統の「上育418号」(後の「ほしのゆめ」)を父として人工交配を行い、以後選抜、固定を図ったものである。
2. 出穂期は「あきほ」より1日早く、「きらら397」より3〜4日早い“早生の中”である。
3. 成熟期は「あきほ」より3〜4日遅く、「きらら397」より1日早い“中生の早”である。
4. 収量は「あきほ」より15〜16%、「きらら397」より8〜12%高い。
5. 穂孕期の耐冷性は「あきほ」「きらら397」より強い“極強”である。
6. いもち耐病性は「あきほ」「きらら397」より強い“やや強”である。
7. 炊飯米表面の「粘り」「付着性」は「あきほ」より少なく、冷凍後においても米飯のダマ化が少ないため加工適性が「あきほ」より高い。
8. 冷凍米飯製造試験では、製品(冷凍ピラフ)の食味を含めた加工適性に対する実需者の評価は「きらら397」と同等である。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 上川(風連以南)、留萌(中南部)以南の道央、道南地域で「あきほ」に置き換えて栽培することにより、北海道米の安定生産を図ることができる。
2. 出穂期が早生で早期異常出穂や苗の徒長の恐れがあるので、成苗移植では育苗時の適正な管理に努める。
3. 初期の分げつ性がやや劣り、穂数確保が難しいので植付け株数は機械移植基準を守る。
4. 玄米等級が劣り、刈り遅れによる等級低下が懸念されるので適期刈り取りを励行する。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 超早生耐冷性品種の育成
予算区分: 指定試験
研究期間: 1994〜2002年度
研究担当者: 沼尾吉則、木内均、前川利彦、木下雅文、相川宗嚴、吉村徹、平山裕治、菊地治己、田中一生、丹野久、佐藤毅、新橋登、田縁勝洋、佐々木一男


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