温湯種子消毒による水稲の種子伝染性病害対策


[要約]
水稲栽培現場での実用的な減農薬技術として、60℃10分または58℃15分の水稲種子の温湯消毒は、種子伝染性のいもち病、苗立枯細菌病、ばか苗病に対し防除効果があり、種子の発芽率および移植時の苗形質への大きな影響はなく、実用性がある。
[キーワード]
  温湯消毒、イネ、種子伝染性病害、いもち病、苗立枯細菌病、ばか苗病、減農薬
[担当]中央農試・クリーン農業部・病虫科、中央農試・生産システム部・栽培システム科、上川農試・研究部・病虫科、上川農試・研究部・栽培環境科
[連絡先]電話01238-9-2291、電子メールtanakafo@agri.pref.hokkaido.jp
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
クリーン農業の推進とともに種子消毒にも減農薬防除技術の開発が望まれている。農薬に依存しない水稲の種子消毒技術として、温湯種子消毒の有効性が山形県農試をはじめとした府県の試験研究機関で確認されているが、種籾を60℃前後の高温で処理するため、品種および種籾の登熟条件によっては発芽率が低下する可能性が指摘されている。このため、水稲の品種・登熟条件が本州と大きく異なる北海道で他府県の結果をそのまま適用するにはリスクが想定される。そこで、温湯種子消毒による各種種子伝染性病害に対する防除効果ならびに北海道の基幹品種の種子の生育に及ぼす影響を評価し、実用化に向けた処理方法を設定する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 温湯投入後の籾袋(4Kg)内部の籾温度推移では,60℃と58℃いずれの処理温度でも開始後1分で温度の一時的な低下が認められるが,2分後にはほぼ設定の温度条件となる(図1,2)。
2. 60℃10分または58℃15分の温湯処理による種子の発芽率は、「ほしのゆめ」、「はくちょうもち」、「あやひめ」ともに3%以内の低下にとどまり、大きな影響は見られない(図3)。
3. 60℃15分では「ほしのゆめ」で8.5〜19.1%、「はくちょうもち」で5.8〜6.0%、58℃20分では「ほしのゆめ」で6.0〜13.0%、「はくちょうもち」で3.0〜6.0%の発芽率の低下が認められる。「あやひめ」は「ほしのゆめ」と同様の傾向である(図4)。
4. 60℃15分または58℃20分の温湯処理による、移植時の苗形質の劣化は認められない。
5. いもち病に対する各温湯処理は、対照のチウラム・ベノミル水和剤にやや劣るが、イプコナゾール・銅水和剤F、銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤処理と同等の効果であり、実用性がある。
6. ばか苗病に対する各温湯処理は、対照のイプコナゾール・銅水和剤F、銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤処理と同等の効果であり、実用性が高い。
7. 褐条病に対する各温湯処理は、対照のイプコナゾール・銅水和剤F、銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤、オキソリニック酸・プロクロラズ水和剤F処理に劣り、実用性は低いか無い。
8. 苗立枯細菌病に対する各温湯処理は、対照の銅・フルジオキソニル・ペフラゾエート水和剤、イプコナゾール・銅水和剤F処理にやや優り、オキソリニック酸・プロクロラズ水和剤F処理とほぼ同等の効果で、実用性が高い。
9. 以上の結果から、発芽率、苗形質に及ぼす影響と防除効果を総合的に判断し、処理条件とし ては60℃10分または58℃15分が妥当である。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 本成果は(株)タイガーカワシマ社製・「湯芽工房」YS-200HCを用いて得られたものである。
2. 本成果は水稲の種子伝染性病害であるいもち病、ばか苗病、苗立枯細菌病の種子消毒に活用する。褐条病の対策は平成8年指導参考事項「水稲の育苗期における細菌病の防除対策」に準ずる。なお上記機種は循環式であり、褐条病を助長する恐れがあるので催芽には使用しない。
3. 必ず乾籾を用い、処理温度と時間を厳守する。処理後は速やかに水で冷却し、直ぐに浸種・催芽を行う。本機種使用に際しての注意事項を遵守する。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 水稲種子温湯消毒確立試験
予算区分: 受託
研究期間: 2002年度
研究担当者: 田中文夫、白井佳代、丹野久、小倉玲奈、五十嵐俊成


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