還元消毒による施設土壌病害虫の防除と糖蜜を用いた下層土消毒法


[要約]
フスマ、米糠を用いた還元消毒により作土層が消毒され、イチゴ萎黄病、ホウレンソウ萎凋病の防除に有効である。糖蜜の土壌潅注で下層土の消毒も可能となり、トマト萎凋病、ナス半身萎凋病の防除に有効である。
[キーワード]
  還元消毒、糖蜜、下層土
[担当]道南農試・研究部・病虫科
[連絡先]電話0138-77-8116、電子メールshinmura@agri.pref.hokkaido.jp
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
還元消毒は、ネギ根腐萎凋病で効果が認められたが、他の土壌病害に対する防除効果は検討されていない。また、トマトなどの深根性の作物の土壌病害に対応には作土のみの消毒では不十分であり、下層土の消毒が必要である。そこで、施設栽培野菜の各種土壌病害虫に対する還元消毒の効果を明らかにし、下層土の消毒法を開発する。
[成果の内容・特徴]
 
1. フスマ、米糠を用いた還元消毒によって作土層のFusarium oxysporum(イチゴ萎黄病菌、ホウレンソウ萎凋病菌)の密度が低下し、防除法として有効である。また、ナス半身萎凋病菌(Verticillium dahliae)に対してフスマを用いた還元消毒で防除効果が認められる。
2. サツマイモネコブセンチュウに対するフスマを用いた還元消毒は、作土の線虫密度を減少させる。しかし、その後に栽培したトマトにネコブの発生が認められたため、下層土の消毒は不完全である。
3. アブラナ科根こぶ病菌に対しては、還元消毒の効果は認められない。
4. 糖蜜を用いた還元消毒のモデル試験で(0.6%(w/w)濃度で150mmの水量を土壌中に潅注)はトマト萎凋病菌(F. oxysporum)、V. dahliae、青枯病菌に対し深さ50cmまでの消毒が可能である(表1)。また、トマト萎凋病菌(F. oxysporum)、ナス半身萎凋病菌(V. dahliae)に対する実証試験で、下層土まで高い防除効果認められた(表2)ことから下層土までの防除法として有効である。
5. 糖蜜を用いた還元消毒によって易還元性のMnが増加し、NO3-Nが減少したが、作物の生育には影響は無いと考えられる。
6. ハウスサイドの内側に断熱材(厚さ5cm、深さ45cm)を埋設することでサイドから30cm、地下30cm地点で地温が約1.5℃上昇し、ハウスサイド内側の消毒効果を高めることができる。
7. 以上のことから、作土層のみの消毒で良い場合は従来のフスマ、米糠を用いた還元消毒、深根性の作物を対象とする場合は糖蜜を用いた還元消毒を行うことが望ましい。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 下層土消毒では水を浸透させにくい土層があると消毒が不完全になる場合がある。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 施設野菜土壌病害虫の無農薬防除法(土壌還元消毒法)の確立
予算区分: 道費(重点領域)
研究期間: 2000〜2002年度
研究担当者: 新村昭憲


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