十勝岳泥流地帯における暗きょ管閉塞要因とその回避対策


[要約]
泥流由来の酸性硫酸塩土壌と泥炭層が存在するほ場では、暗きょ管が鉄酸化細菌の沈積物で閉塞する。暗きょ管閉塞の発生危険域は土壌の硫酸イオン含有量と泥炭の存在で予測することができ、ロックウール疎水材の使用が回避対策として有効である。
[キーワード]
  暗きょ管、泥流、泥炭、鉄酸化細菌、酸性硫酸塩土壌、ロックウール
[担当]中央農試・農業環境部・環境基盤科
[連絡先]電話01238-9-2582(内312)、電子メールkitagaiw@agri.pref.hokkaido.jp
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
美瑛町の十勝岳泥流地帯では、短期間で暗きょ管が堅密な黒〜赤褐色物質により閉塞減少が確認されている。暗きょ管の閉塞による排水機能の消失は、多額の整備費用を投資した暗きょが無に等しくなることを意味しており、早急に暗きょ管が短期間で閉塞する原因を解明し、暗きょ排水の機能を長期間維持するための、暗きょ管閉塞の回避対策の確立が迫られている。
[成果の内容・特徴]
 
1. 美瑛町美沢の暗きょ管は、施工後1年以内に閉塞する(図1)。この閉塞物質は、鉄とイオウ含量が高い非晶質物質で(表1)、繊維状に集合したGallionella属の鉄酸化細菌の代謝物(鉄バクテリア膜)である。
2. 暗きょ管が短期間で閉塞する過程は図2に示すように、(1)泥流由来の酸性硫酸塩土壌中の硫化鉄が酸化され硫酸と鉄が下層に移動し、(2)客土と水田利用による強還元で泥炭層に硫化鉄類の集積が進む。(3)畑転換と暗きょ施工で集積していた硫化鉄類が酸化され、硫酸と鉄が暗きょ管に流入し、(4)鉄酸化細菌の働きによって鉄バクテリア膜として沈積する(図2)。
3. 美瑛町美沢の全域を対象に土壌の硫酸イオン含有量と泥炭の存在の調査を行い、「硫酸イオン含有量が0.2%以上の条件下で泥炭が存在」の閉塞危険域と「硫酸イオン含有量が0.2%以上の条件下で泥炭が未確認」の準危険域に区分することにより、暗きょ管閉塞発生を予測することができる(図3)。
4. チップを疎水材に使用する従来暗きょでは施工後6ヶ月でも鉄バクテリア膜が形成され暗きょ管の32%が閉塞している。これに対して、疎水材にロックウールを使用すると(図4)、排水のpHが高まり鉄酸化細菌の繁殖を抑制するため、全く鉄バクテリア膜が形成されない(表2)。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 本法は十勝岳泥流地帯及び同様な要因で暗きょ管が閉塞する地域に対して活用する。
2. 本法の施工にあたっては、ロックウールの投入方法と投入量、掘削土の中和、管内清掃用紐の付設に留意する。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 北海道における高度排水改良法の開発と基準策定
予算区分: 道費
研究期間: 2000〜2002年度
研究担当者: 北川巌、竹内晴信
発表論文等: 北川・竹内ら(2002) 農業土木学会北海道支部研究発表会講演集51:48-53.


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