畑地における地下水の硝酸汚染防止のための投入窒素限界量


[要約]
深根性作物を含む畑作において、地下浸透水の硝酸態窒素濃度が環境基準(10mg/L)を超過しない年間投入窒素限界量は約15kg/10aである。また、施肥標準に準じた栽培では年間投入窒素量が限界量以下となるため、硝酸汚染を生じる恐れは少ない。
[キーワード]
  畑地、地下水、硝酸汚染、投入窒素限界量、環境基準
[担当]北見農試・生産研究部・栽培環境科
[連絡先]電話0157-47-2565、電子メールsuzukikj@agri.pref.hokkaido.jp
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
農地の地下水は投入窒素量が多いほど硝酸汚染を受けやすいとされているが、標準的な作付体系における投入窒素限界量については明らかになっていない。そこで、畑地を対象に、地下浸透水中の硝酸態窒素濃度を環境基準である10mg/L以下に維持するための投入窒素限界量を検討する。
[成果の内容・特徴]
 
1. 試験期間中の平均水収支は、降水量が 879mm、蒸発散量(推定値)が 394mm、地下浸透水量が 335mmである。地下浸透水量は過去10年間の推定平均値 314mmと同水準にあり、試験期間の水収支は標準的な値である。
2. 浸透水中の硝酸態窒素濃度は、投入窒素量が多いほど高い。根張りの深い秋播小麦やてん菜では生育ステージが進むにつれて急激な濃度低下が認められるが、馬鈴しょではこのような濃度低下は見られない(図1)。
3. 硝酸態窒素の溶脱量及び溶脱率は、投入窒素量が多いほど高まる。また時期的には、融雪期および 9〜10月に窒素溶脱のピークが認められる(図2図3)。
4. 深根性作物を含む畑作における地下浸透水の年平均硝酸態窒素濃度が10mg/Lを超過しない年間投入窒素(施肥窒素+施用有機物からの放出窒素)の限界量は約15kg/10aである(図4)。
5. 標準的な畑輪作体系において、施肥標準および有機物施用に伴う施肥対応を行う場合の年間投入窒素量は限界量以下であり、地下浸透水の年平均硝酸態窒素濃度が10mg/Lを超過する恐れは少ない。
6. 最終的に地下水中の年平均硝酸態窒素濃度を10mg/L以下とするためには、作付体系あるいは土地利用における平均投入窒素量を限界量以下にする必要がある。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 年間投入窒素限界量は、道内の畑地で既に硝酸態窒素による地下水汚染が発生しているか、その恐れがある地域において適用する。
2. 本研究は,窒素溶脱が比較的起こりにくい条件下(有効土層の深い黒ボク土)で実施した。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: たい肥等有機物・化学肥料適正使用指針策定調査
2.施用基準設定栽培試験
2)多湿黒ボク土における堆厩肥の施用基準設定(土壌機能増進対策事業)
予算区分: 補助(土壌保全)
研究期間: 1998〜2002年度
研究担当者: 鈴木慶次郎、上野達、志賀弘行


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