寒地のチモシー集約放牧草地における適正な施肥時期・施肥回数


[要約]
寒地のチモシー集約放牧草地の施肥は、5月上旬・6月下旬・8月下旬の年3回均等分施が望ましいが、シロクローバとの混播草地では、季節生産性や乾物生産性を牧区数と面積で調整することにより、5月上旬・7月下旬または6月下旬・8月下旬の年2回均等分施に省力化できる。
[キーワード]
  チモシー、集約放牧、施肥回数、施肥時期
[担当]根釧農試・研究部・草地環境科
[連絡先]電話01537-2-2004、電子メールsakaiosm@agri.pref.hokkaido.jp
[区分]北海道農業・生産環境、畜産草地・永年草地・放牧
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
北海道の放牧草地における施肥時期および施肥回数は、季節生産性の平準化と草量確保の両立を図るため早春、6月下旬および8月下旬の年3回均等分施が推奨されている。しかし、生産現場では2、3回目の施肥時期と採草地の1、2番草の刈取時期が重なるため両方の作業を行うことは困難である。また、チモシー(以下TY)の集約放牧では、放牧面積の季節調節が前提となっているので、牧区数や面積の調節など施肥以外の方法による草量確保が行いやすくなってきた。そこで、TYを基幹とする集約放牧草地を対象に適切な施肥時期・施肥回数について検討した。
[成果の内容・特徴]
 
1. 刈取時の草丈30cm、刈高10cmの多回刈り条件では、草量確保と季節生産性の平準化を両立させる観点からは、TY・シロクローバ(以下WC)混播草地、TY単播草地ともに従来の5月上旬・6月下旬・8月下旬の年3回均等分施が望ましい。施肥回数を年2回に低減すると、早春に養分供給のある処理は季節変動が増大し、ない処理は乾物生産性が低下する。これらの傾向は、年1回施肥によりさらに著しくなる。TY単播草地における施肥回数の低減は、乾物生産性の季節変動を著しく高める(図1)。
2. 搾乳牛を放牧した放牧草地においても、施肥回数の低減は放牧草の現存草量とその季節変動をともに高める(図2)。また、放牧草の利用量は、施肥回数によらずほぼ一定のため、放牧草の利用率は、施肥回数の低減により明らかに低くなる(図3)。
3. ただし、 TY・WC混播放牧草地の場合、5月上旬・7月下旬または6月下旬・8月下旬の年2回均等分施にすれば、前者は通年、後者は5・6月に大面積を要するものの7月以降の必要面積・牧区数を年3回均等分施とほぼ同等にすることができる(表1)。
4. 以上の結果、TYを基幹とする集約放牧草地(ホルスタイン搾乳牛の年間入牧頭数370〜430頭・日/ha)の施肥は、5月上旬・6月下旬・8月下旬の年3回均等分施が望ましいが、TY・WC混播放牧草地では季節生産性の低下をきめ細かい牧区計画で緩和すると5月上旬・7月下旬、乾物生産性の低下を面積拡大で補うと6月下旬・8月下旬の年2回均等分施に省力化できる。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 本成果は生育期間の気象条件が冷涼な根釧地方で得られたものであり、生育期間の気温が高い地域では施肥の省力化による収量の季節変動は大きくなる。
2. チモシーの集約放牧とは、放牧時の利用草丈約30cm、喫食草高10cm程度の短期輪換放牧を指す。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 草草地酪農における飼料自給率70%の放牧技術の開発
(4)チモシー基幹放牧草地の施肥法
予算区分: 国費補助
研究期間: 1998〜2002年度
研究担当者: 酒井治、寳示戸雅之、三木直倫、三枝俊哉
発表論文等: 酒井ら(2001)北海道草地研究会報35:40


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