寒地火山灰草地の更新時にすき込んだ重窒素標識堆肥に由来する窒素の動態


[要約]
重窒素で標識した牛糞堆肥を寒地火山灰草地の更新時に50-200 t/haすき込むと、翌年には重窒素の3-7%が牧草に、65-87%が0-50cmの土壌に含有され、6-31%が回収されない。堆肥施用量を増やすと、土壌と牧草の重窒素含有量は増大するが、下層土への移動量も増え、回収率は低下する。
[キーワード]
  重窒素、堆肥、草地更新、寒地、火山灰、環境負荷
[担当]根釧農試・研究部・草地環境科
[連絡先]電話01537-2-2004、電子メールsaigusa@agri.pref.hokkaido.jp
[区分]北海道農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料、畜産草地・生産管理
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
寒地型の草地は毎年耕起されないので、草地更新時には維持管理時よりも大量の堆肥が施用される傾向にある。家畜糞尿の余剰による窒素の環境汚染が問題化している今日、草地更新時の堆肥施用に伴う環境への影響評価が急務である。施用された堆肥に含まれる窒素の行方は、牧草や土壌の全窒素含有量について、窒素を施用しない対照区との差し引き法で推定されることが多い。しかし、窒素は土壌中における形態変化が著しいので、従来法では堆肥由来の窒素を土壌や肥料の窒素と区別することが困難である。そこで、重窒素で標識した堆肥を草地更新時にすき込み、更新翌年の土壌と牧草の重窒素含有量を調査することにより、堆肥に由来する窒素の動態把握を試みる。
[成果の内容・特徴]
 
1. 寒地の普通黒ボク土におけるチモシー草地の更新時(8月)に、無底ポットを用いて重窒素で標識した堆肥(表1)を0-15cmの作土に50-200 t/haすき込み、出芽後刈り取りを行わずに越冬させ、翌年標準的な栽培を行うと、秋には投入された重窒素の65-87%が0-50cmの土壌に蓄積し、3-7%が牧草に利用され、6-31%が回収されない。堆肥施用量の増加に伴い、土壌と牧草の重窒素含有量は増大するが、回収率は低下する(表2)。
2. 土壌に混和された堆肥の重窒素は、草地更新翌年の秋までに、混和層よりも下層に移動する。また、その移動量は堆肥施用量に応じて増大する(図1)。
3. 以上のように、寒地における火山灰草地の更新時に堆肥がすき込まれると、堆肥の窒素は牧草と土壌に移行するとともに、一部は下層に移動する。この移動は堆肥施用量50t/haの水準でも認められ、堆肥施用量を増やすとその程度が増大する。
[成果の活用面・留意点]
 
1. 草地更新時における堆肥の過剰施用が環境負荷の原因になり得ることを示す資料となる。
2. 本成果における標準的な栽培とは、窒素、リンおよびカリウムの年間施肥量それぞれ160kgN/ha、80kgP2O5/haおよび180kgK2O/ha、年2回刈りの採草管理を指す。
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名: 草地酪農地帯における環境負荷物質の動態解明
予算区分: 指定試験
研究期間: 1999〜2003年度
研究担当者: 松本武彦、三枝俊哉、三木直倫、宝示戸雅之
発表論文等: 松本ら(2002)日本土壌肥料学会講演要旨集 48:151.


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