集出荷コストの低減に向けた物流ABC分析の活用法


[要約] [キーワード] [担当]中央農試・生産システム部・経営科
[連絡先]電話01238-9-2286
[区分]北海道農業・総合研究
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の活用面・留意点]
  1. 物流ABC分析は、物流コストを作業工程(Activity)ごとに算定する原価計算方式である。A産地を事例に(図1)、集出荷施設内で発生する費用を物流ABC分析により明らかにした(表1)。
  2. A産地の事例をみると、資源別コストの構成では、人件費のウェイトが高かった。また、作業工程ごとの構成では、配置された作業者の多い箱詰め工程と選果工程で生じるコストのウェイトが高かった。したがって、集出荷コストの低減にあたり、人件費の見直しが重要となる。特に、選果工程と箱詰め工程に着目することが有効になる。
  3. 人件費は、出荷量の増加に対応して作業者数を増加させたことと、選果ラインの処理速度の早めたことに対応して時間給をあげたことで、上昇していた(表2)。ただし、出荷量が増加したことと施設内の労働生産性が向上したことから、ケース当たりの負担額の上昇を回避していた(表2)。作業者数の削減を伴わずに人件費を抑制するには、施設の労働生産性の向上と出荷量の増加が必要となる。
  4. 選果作業の労働生産性は、搬入されたトマトの等級がばらつく時ほど低下していた(図2)。とりわけ、規格外品の発生率が高まる時ほど、労働生産性の低下が認められた。また、箱詰め作業の労働生産性は、規格ごとの出現玉数が不揃いな時ほど低下していた(図3)。
  5. 出荷量を増加させることは、減価償却費等の固定的な費用の抑制につながり、集出荷コストの低下に結びつくことが認められた(図4)。また、閑散期の10月の人件費は割高となっていることから、施設の稼働期間内における出荷量を平準化させていくことが、人件費の抑制に効果をもつことが認められた。
  6. 集出荷コストのあり方は、施設に持ち込まれる量と中身(規格・品質)に左右されることが判明した。そのため、物流ABC分析を用いた集出荷コストの低減には、分析結果を施設内の作業改善を図る場面に用いることにとどめず、分析結果に基づく営農指導により施設に持ち込まれる農産物の量と中身(規格・品質)を安定させていくことが有効となる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は、野菜産地において集出荷コストの見直しを図る場面で活用できる。
  2. 物流ABC分析の実践には、専用ソフト(日本施設園芸協会)を用いることができる。
[具体的データ] [その他]
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