ウイルス遺伝子を利用した高度なウイルス抵抗性植物
[要約]
テンサイそう根病ウイルスの外被タンパク質遺伝子読み過ごし領域をタバコあるいはてんさいへ導入することで高度なウイルス抵抗性個体が得られる。抵抗性発現のメカニズムは導入遺伝子による転写後のジーンサイレンシングによる。
[キーワード]
テンサイそう根病ウイルス、ウイルス抵抗性、ジーンサイレンシング
[担当]中央農試・農産工学部・細胞育種科、遺伝子工学科、岡山大学・資源生物科学研究所
[連絡先]電話0123-89-2583
[区分]北海道農業・基盤研究
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
タバコ野生種の形質転換系利用によりテンサイそう根病に抵抗性として機能することが明らかになったテンサイそう根病ウイルス遺伝子の一部領域をてんさい植物体に導入し、その発現と抵抗性メカニズムを明らかにする。
[成果の活用面・留意点]
- テンサイそう根病ウイルス(BNYVV)RNA2(図1)にコードされる外被タンパク質遺伝子読み過ごし領域(RTD遺伝子)をタバコ野生種N.benthamianaへ導入することで、テンサイそう根病に抵抗性の形質転換体が高頻度(75%)に得られる。
- 抵抗性反応は、葉へのウイルスの汁液接種に対して全身症状が現れない高度抵抗性(HR型)、および接種2週間以内に全身症状が現れるが、3〜4週間後の新しく発達する葉では病徴が出ず、ウイルスの汁液接種に抵抗性となる回復抵抗性(RC型)の二種類が見られる。
- RTD形質転換系統のノーザン解析では、mRNA量は回復抵抗性系統で高く、高度抵抗性系統ではかなり低い(図2A)。また、ウイルス接種後の回復抵抗性系統および高度抵抗性系統の葉では、siRNAが検出される(図2B)。このことから、高度抵抗性は導入遺伝子のRNA転写後のサイレンシングによる、また、回復抵抗性はウイルス感染によってサイレンシングが引き起こされると考えられる。
- N.benthamianaにおいてテンサイそう根病抵抗性遺伝子として機能することが明らかになったRTD遺伝子のてんさいへの導入により、BNYVV汁液接種に対して接種葉に病徴が現れない高度抵抗性を示す形質転換個体が得られる(図3)。
- 高度抵抗性を示すRTD形質転換てんさい個体では、導入遺伝子のmRNAは検出されず(図4A)、また、ウイルス接種葉においてウイルス増殖が見られない(図4B)ことから、高度抵抗性はN.benthamianaにおけるRTD形質転換体と同様に転写後のジーンサイレンシングによるものと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
- 植物を利用した遺伝子の機能解析や発現メカニズム解明の参考となる。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「てんさいそう根病抵抗性を誘導するウイルス由来遺伝子の発現と機能解析」(研究参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:てんさいそう根病抵抗性遺伝子の発現と機能解析
予算区分:受託
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:玉掛秀人、鈴木孝子、佐藤毅、佐々木純、楠目俊三、IdaBagusAndika(岡山大学)、玉田哲男(岡山大学)
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