フルクタン合成酵素遺伝子の導入によるペレニアルライグラスの耐凍性の強化


[要約] [キーワード] [担当]北海道農研・地域基盤研究部・越冬ストレス研究室、作物開発部・イネ科牧草育種研究室
[連絡先]電話011-857-9524
[区分]北海道農業・基盤研、作物・生物工学
[分類]科学・参考



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 得られた形質転換体は、コムギの2種のフルクタン合成酵素sucrose:sucrose 1-fructosyltransferase(1-SST),およびsucrose:fructan 6-fructosyltransferase(6-SFT)の遺伝子をそれぞれ35SプロモーターにつないだpUC系ベクターとビアラフォス耐性遺伝子(bar)を持つベクターを用いて、パーティクルガンによるco-transformation法でペレニアルライグラス品種「Rikka」の完熟種子由来のカルスに遺伝子を導入されている。
  2. ビアラフォス耐性カルスから再生したT071個体のうち、27個体で6-SFT遺伝子,6個体で1-SST遺伝子,4個体で両遺伝子の導入がPCR-サザンハイブリダイゼーション法により確認されている。
  3. 遺伝子導入が確認された個体について、葉のフルクタン含量を分析すると、コントロール植物(非遺伝子導入のカルス由来再生個体,C1,C2;種子から育成した個体,C3)と比較して、両遺伝子が導入された植物(2-3,6-9)では有意な差がみられないが、6-SFT遺伝子導入個体(7-3,14-1)、1-SST遺伝子導入個体(7-2,9-1,10-1)では、フルクタンの含量が有意に高い(図1)。
  4. フルクタン含量増加が見られる形質転換体で導入遺伝子発現が検出されるため、培養変異ではなく導入遺伝子の効果によるフルクタン合成促進と判断できる(図2)。
  5. 形質転換体(T0)はすべて形態的な異常および稔性の低下を示さない。
  6. T0個体を6℃明/2℃暗、3週間の低温ハードニング処理後、切離葉を用いた電気伝導度法で耐凍性検定すると、高フルクタン蓄積個体はコントロールのペレニアルライグラスを上回る耐凍性を示す(図3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 高フルクタン蓄積個体は、越冬性の高いペレニアルライグラスの育種素材として利用できる。
  2. 高フルクタン蓄積個体は、嗜好性の高い機能性ペレニアルライグラスの育種素材として利用できる。
  3. この技術は、他の越冬作物の耐凍性、越冬性強化技術にも応用できる。
[具体的データ] [その他]
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