「WILIS」を用いたダイズわい化病高度抵抗性育種素材
[要約]
ダイズわい化病に対して既存品種より極めて高い抵抗性を示す遺伝資源「WILIS」を選定し、これを母本に高度抵抗性の育種素材「植系32号」を選抜した。
[キーワード]
ダイズわい化病、高度抵抗性、遺伝資源、育種素材、植系32号
[担当]道立植物遺伝資源センター・研究部・資源利用科、道立中央農試・作物開発部・畑作科
[連絡先]電話0125-23-3195
[区分]北海道農業・作物
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
ダイズわい化病はジャガイモヒゲナガアブラムシが媒介するウイルス病であり、大豆の著しい減収や品質低下の原因となるなど重大な病害のひとつである。従来の抵抗性遺伝資源はわい化病が多発する条件下では十分な抵抗性を示さず、既存の抵抗性品種では殺虫剤による防除が必不可欠である。よって、大豆の生産安定および低農薬栽培を実現するためには、ダイズわい化病に高度な抵抗性を示す新たな遺伝資源を探索し育種素材化を図ることが重要である。
そこで、植物遺伝資源センターにおいて見いだした新規抵抗性遺伝資源の中から高度な抵抗性を持つ母本を選定し、高度抵抗性の育種素材を作出する。
[成果の内容・特徴]
- 「WILIS」(植物遺伝資源センター登録番号21085)は、複数年の試験において既存の抵抗性品種および遺伝資源より常に発病が低く抑えられていた(図1)。
- 「WILIS」は圃場では開花にも至らず、主茎長が150cmを超えるなど一次特性が北海道の大豆品種とは大きく異なり(表1)、実用品種育成に交配母本として直接利用することは困難と考えられた。
- 植交9901(「樺太一号」×「WILIS」)の後代から、「WILIS」並のわい化病抵抗性を持ち熟期と草型が改善された「植系32号」を育成した。同系統は伊達現地圃場のわい化病激発条件下においても病徴がほとんど認められず(表2)、十勝のわい化病現地多発圃場でも発病が低く抑えられており(成績省略)、抵抗性「強」のツルコガネより高度な抵抗性を示した。
- 「植系32号」は粒大が小さく臍が暗褐色であるが、熟期が「トヨコマチ」と「トヨムスメ」の間で主茎長は両品種より短く、収量性は「トヨコマチ」と同等であり(表3)、「WILIS」と比較して著しい特性の改善が認められた。
[成果の活用面・留意点]
- 「植系32号」はわい化病高度抵抗性の実用品種育成に交配親として直接利用できる。
- 「植系32号」は今後のわい化病抵抗性育種において、現在「強」の標準品種である「ツルコガネ」より高度な抵抗性の標準系統として利用できる。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:
・ダイズわい化病極強抵抗性品種育成のための有用遺伝資源の探索及び育種素材化
・多様な抵抗性因子を付加したわい化病高度抵抗性系統の育成
予算区分:国費受託(21世紀プロ)
研究期間:1999〜2001、2002年度
研究担当者:田澤暁子、神野裕信、手塚光明、三好智明、鴻坂扶美子、田中義則
発表論文等:田澤ら(2002)日本育種学会第102回講演会要旨集:p286
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