染色体を倍加させるためのばれいしょ培養法
[要約]
ばれいしょの茎切片を改変MS平板培地上で2週間組織培養することによりカルス化が誘導され、続いてホルモン濃度を変えた改変MS培地に移植することにより再分化が起こる。再分化個体において染色体の倍加が起こり、種および系統によりその頻度は異なるが、コルヒチンを使わずに容易に染色体の倍加が可能である。
[キーワード]
[担当]北海道農研・畑作研究部・ばれいしょ育種研究室
[連絡先]電話0155-62-9272
[区分] 北海道農業・作物、作物・夏畑作物
[分類] 科学・参考
[背景・ねらい]
ばれいしょ普通栽培種は遺伝的に四倍体である。一方野生種の多くは二倍体であるため、母本として利用するためには染色体の倍加を要する。コルヒチン処理による染色体倍加が普通作物では一般に行われているがばれいしょでは効率が非常に悪く、種間交配法、塊茎を使った組織培養法が行われている。塊茎の組織培養による倍加は、塊茎を形成しない種も多いばれいしょ野生種への適応は難しい。そこで本研究では、野生種に適応可能な、茎切片を利用した倍加手法の確立を試みた。
[成果の活用面・留意点]
- MS基本培地に1mg/lThiamin-HCl、0.5mg/lNicotinicacid、0.5mg/lPyridoxine-HCl、0.4mg/lAsparatic acid、3%Sucrose、0.2%GellanGum、100mg/lMyo-inositol、5mg/l3-Indoleaceticacid、2mg/lZeatinribosideを添加した改変MS平板培地上でジャガイモの茎切片を培養するとカルス化が誘導されるが、カルス化の程度には種および系統間差が認められ、カルス化程度の高いものでのみ再分化個体が得られる(表1、図1)。
- 茎切片由来カルスからの再分化には培地中のホルモンの種類と濃度が影響し、Zeatinribosideのみを含む改変MS培地(表2、3に示すM10)で最もよく再分化する(表2、表3)。
- 二倍体の種および系統では、カルス化・再分化の過程において、高い頻度で染色体の倍加が起こる(表1)。一方、四倍体系統(さやか)では倍加個体は得られにくく、出現頻度は2%である(M1-M10それぞれの再分化培地を用いた培養により得られた全ての再分化個体の分析データより算出、データ省略)。
- 低照度(3500lux)で培養すると茎切片からの発根が起こり、一方高照度(22000lux)では根の発根が抑制される。またシュートの再分化は高照度の方でよく起こるため(表4)、培養には高照度の光条件が適しており、図1に示す方法で容易に倍加個体を得ることができる。
[成果の活用面・留意点]
- 二倍体野生種および品種・系統の染色体を倍加することにより、四倍体普通栽培種との交配母本として利用することができる。
- 本培養法では再分化しない種および系統がある。
- 倍加個体以外に、頻度は非常に低いが異数体も出現する。
[具体的データ]
[その他]研究課題名:ばれいしょにおけるゲノム倍加技術の検証および開発
課題ID:04-03-02-*-23-02
予算区分:交付金
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:小林晃、高田明子、津田昌吾、森元幸
発表論文等:2003年育種学・作物学会北海道談話会会報44,47-48
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