ウシES細胞の樹立とES細胞由来クローン産子の作出


[要約] [キーワード] [担当]道立畜試・畜産工学部・遺伝子工学科、受精卵移植科
[連絡先]電話01566-4-5321
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]科学・参考



[背景・ねらい] [成果の活用面・留意点]
  1. ウシ胚盤胞期胚(15胚)の内部細胞塊(ICM)を単離培養した結果、4つ(27%)のICMにおいてフィーダー細胞への接着、伸展が観察され、15から20回の継代培養により株化された。得られた細胞株はアルカリフォスファターゼ活性を有し、SSEA-1、OCT-4およびSTAT-3遺伝子のいずれも発現していることが明らかとなった。
  2. ウシES細胞におけるリポフェクション法による遺伝子導入効率はウシ胎子繊維芽細胞(1%以下)よりも高い(5〜8%)傾向がみられた。また、緑色蛍光蛋白質(EGFP)発現ウシES細胞を用いてキメラ形成能を検討した結果(表1)、ウシES細胞では胚盤胞期胚の42%においてICMもしくは栄養膜細胞およびその両方においてEGFP発現細胞が観察された。
  3. ウシES細胞をドナー細胞に用いた核移植および産子の作出を行った(表2)。ドナー細胞とレシピエント卵子の融合率ならびに核移植胚の分割率は高い値を示したが、胚盤胞期までの発生率においては著しく低い値(3〜7%)となった。得られた胚盤胞期胚をレシピエント牛に移植した結果、いずれの区においても受胎(発情後42日目)が確認され、計3頭の産子を得た(表3)。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本試験で樹立されたウシES細胞は、ES細胞における最も重要な特性である未分化性および多分化能は十分確認されているが、キメラ個体での生殖細胞への寄与は確認していない。
  2. ウシES細胞をドナー細胞に用いた場合、胚盤胞形成率が低かったことから、ES細胞に特化した核移植法の検討が必要である。
[具体的データ] [その他]
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