ナガイモの催芽処理期間における青かび病防除対策
[要約]
催芽過程における種いも腐敗の主因は青かび病菌であり、種いもに付着している土壌の切断面への付着が主要な感染源である。種いもの付着土壌の除去、切断刀や粉衣用石灰の清潔な保持が本病の防除対策の基本で、種いもの薬剤浸漬の併用で効果は高まる。
[キーワード]
[担当]十勝農試・生産研究部・病虫科、作物研究部・てん菜畑作園芸科
[連絡先]電話0155-62-2431
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
種いもの催芽過程で発生する腐敗の主要原因を明らかにし、腐敗を最低限に抑えるための適切な催芽前各種処理条件を検討し、防除対策を確立する。
[成果の内容・特徴]
- 催芽処理期間の種いも内部腐敗から分離される糸状菌はPenicillium属菌が最も多く、次いで Pythium属菌である。Penicillium属菌による青かび病が腐敗原因の主体である。
- 種いもの催芽処理期間中の腐敗は、使用可能な種いもが減少するだけでなく、腐敗種いもを植え付けると不萌芽の増加や減収となる(表1)。
- 種いもの催芽処理期間に腐敗を引き起こす糸状菌は、切断面や傷口からのみ感染する。
- 青かび病による腐敗は25℃で最も速く、5℃でもわずかながら進行する。
- 種いも切断前に、表皮に付着している土壌を水洗後風乾したり、切断刀を種いも切断のたびに70%エタノールに瞬間浸漬してペーパータオルで拭くと本病の発生は軽減する(図1)。一方、種いもの付着土壌が石灰に混入した条件で切断面の粉衣処理を行うと、青かび病の腐敗いも率は高くなり、腐敗程度も激しくなる(図2)。これらのことから、ナガイモ表面の付着土壌は本病の感染源として重要である。
- チウラム・ベノミル水和剤100倍液への10分間浸漬処理は、薬害がなく、本病に対して高い防除効果が認められるが(表2)本処理のみで本病を完全に防ぐことは困難である。
- 種いもの切断面に青かび病菌を接種すると、キュアリングの設定温度に関係なく、その後の催芽処理終了後には腐敗する。したがって、キュアリング期間の温度設定により腐敗を回避することは困難である。一方、接種直後の石灰粉衣処理は腐敗を抑制する。
- 以上のことから、青かび病による腐敗を軽減させるためには、付着土壌の水洗などによる除去や、切断刀を清潔に保つことにより、切断面になるべく感染源となる土壌が付着しないようにして、速やかに清潔な石灰を粉衣することが基本であり、薬剤浸漬の併用によって防除効果はより高まる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- キュアリングの条件は北海道の平成10年指導参考事項に準ずる。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「ながいもの催芽処理期間における青かび病対策」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:種いもの催芽処理期間におけるヤマノイモ青かび病対策
予算区分:道費
研究期間:2004年度
研究担当者:清水基滋、鳥越昌隆
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