秋まき小麦の起生期無機態窒素診断による窒素追肥量


[要約] [キーワード]秋まきコムギ、土壌診断、硝酸態窒素、起生期、窒素施肥 [担当]十勝農試・生産研究部・栽培環境科、技術普及部・技術体系化チーム、北見農試・生産研究部・栽培環境科
[連絡先]電話0155-62-2431
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及



[背景・ねらい] [成果の内容・特徴]
  1. 有効土層が深い場合や、心土破砕により有効土層を拡大した場合、下層土の無機態窒素が吸収され、収量や子実タンパク濃度が増加する。
  2. 十勝・網走地方において土壌残存無機態窒素の大部分は硝酸態窒素である(図1)。また、窒素供給量(下層土を含めた残存硝酸態窒素量と起生期以降の窒素追肥量の合量)は小麦粗収量、子実タンパク、窒素吸収量と全般に相関関係が認められることから、残存硝酸態窒素の測定による起生期以降の追肥量設定の有効性が示唆される。
  3. 十勝・網走地方における小麦の根長密度や有効土層深、重窒素標識硝酸態窒素の利用率から判断すると、硝酸態窒素評価のための土層深は概ね60cmである(図2)。
  4. 窒素供給量と窒素吸収量の関係において年次間差異、土壌間差異は小さく、有意な相関関係(r=0.59**)が認められる(図3)ことから、これをもとに目標タンパクを10.0%とした場合の収量水準に対応した起生期以降の窒素追肥量を設定する(表1)。計算式は以下の通りである。
     起生期以降の窒素追肥量[kg/10a]=(目標窒素吸収量−7.73)/0.51−(0〜60cmの硝酸態窒素量)  
  5. 想定窒素吸収量と実窒素吸収量の差の程度をもとに適合性を検証すると、7割以上が±2kgN/10aの範囲におさまっており、不適合地点は多量に有機物を施用した圃場や起生期の生育量が大きく劣る圃場である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成績は主として道東地方に適用し、多量に有機物を施用した圃場、泥炭土、晩播及び雪腐病被害程度の大きい圃場は除外する。
  2. 収量水準の設定においては、適用圃場における通常年の収量およびタンパクの実績を参考とし、過大な収量、窒素吸収量を目標としない。
[具体的データ] [その他]
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