畑作生産に由来する温室効果ガス発生量のLCAによる算定法と十勝地域の大規模畑作への適用
[要約]
作物生産体系全体から発生する温室効果ガス発生量のLCAによる算定方法を提案し、その方法を十勝地域の大規模畑作に適用すると、1年あたりの温室効果ガス発生量(CO2換算値)は、小豆の1.72tCO2/haからてんさいの2.71tCO2/haとなる。
[キーワード]
LCA、温室効果ガス、地球温暖化ポテンシャル、大規模畑作
[担当]北海道農研・畑作研究部・生産技術研究チーム
[連絡先]電話0155-62-9274
[区分]北海道農業・生産環境、共通基盤・土壌肥料
[分類]行政・参考
[背景・ねらい]
地球温暖化の原因となる温室効果ガスの発生は、農業が引き起こす環境負荷の一つであり、その低減が求められる。畑作農業では、機械作業、収穫物の輸送や農業資材の消費を通して化石燃料の燃焼から直接、間接的にCO2が発生する。土壌面では、土壌有機物の分解、蓄積によりCO2が発生、吸収されたり、窒素施肥によるN2O(亜酸化窒素)の発生やCH4(メタン)吸収も起こる。このように作物生産体系は、温室効果ガスの発生・吸収を伴う多くの生産工程を含むので、生産体系全体を対象とするLCA(ライフサイクルアセスメント)手法を用いて、十勝地域の大規模畑作から発生する温室効果ガス量を算定する。
[成果の活用面・留意点]
- 畑作生産に関与する温室効果ガスは、主にCO2,N2O,CH4であり、これらの発生、吸収量を求めるため、LCA手法による表1の算出方法を提案する。
- 地球温暖化ポテンシャル(CO2:1,N2O:296,CH4:23、IPCC(2001))を用いて、3種の温室効果ガスの発生、吸収量をCO2換算すると、作物種別の年間温室効果ガス発生量は、小豆の1.72tCO2/ha/年〜てんさいの2.71tCO2/ha/年となる(図1)。
- いずれの作物においても、全体の温室効果ガス発生量に対して、CO2間接排出の寄与が最も大きい(37〜63%)ことから、農業資材の節約は、温室効果ガス発生量の効果的な抑制につながる(図1)。
- 全温室効果ガス発生量に占めるN2O発生の割合は、2〜15%と低い。これは窒素施用量に対するN2O-Nの割合が低かった(0.36%)ためである。CH4吸収の温室効果ガス発生抑制効果はわずかである(図1)。
[成果の活用面・留意点]
- 表1のCO2排出係数は更新されるので、最新の値を使用する。
- 土壌におけるCO2、N2O発生、CH4吸収は土壌の種類や圃場管理作業に左右されるので、対象となる土壌、栽培体系が変更になる場合は、新たにデータを取得するか、ほかの文献値などを利用する必要がある。
[具体的データ]
[その他]研究課題名:大規模畑作地帯における環境評価手法による輪作体系の比較
課題ID:04-04-01-01-07-02
予算区分:交付金プロ(LCA)
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:古賀伸久、中野寛
発表論文等:1)N.Kogaetal.(2003)Agric.Ecosys.Environ.99.213-219
2)N.Kogaetal.(2004)GlobalBiogeochem.Cycledoi:10.1029/2004GB002260(インターネット版)
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