雪氷冷熱エネルギー利用によるダイコン、ナガイモの長期貯蔵技術
[要約]
雪氷室型貯蔵庫を用いて冬季の加工向けダイコンを翌2月まで、生食ナガイモを周年貯蔵できる。ナガイモの乾物率が15%以下になると、貯蔵中の腐敗が多く発生する。
[キーワード]
[担当]道立花・野菜技セ・研究部・園芸環境科
[連絡先]電話0125-28-2800
[区分]北海道農業・流通利用
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
雪氷冷熱エネルギーを利用した貯蔵施設は、全道に30カ所を数えるに至り、低温環境維持・あるいは高湿度環境維持といった特長を生かし、農産物の長期貯蔵あるいは一時保存・予冷等に利用されている。さらに、総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会報告書(NEDO)において雪氷冷熱エネルギーが「新エネルギー利用等」として位置づけられたことから、今後は炭酸ガス発生抑制など、石油エネルギーの代替という環境面からも雪氷などの自然冷熱エネルギーが注目される可能性が高い。
そこで、自然エネルギー利用型貯蔵庫の一種である雪氷室型貯蔵庫を用いてダイコンの冬季の加工用途向けとしての貯蔵、および、ナガイモの生食向けとしての周年貯蔵を行い、貯蔵形態および貯蔵期間に関して検討を行う。また、ナガイモに関しては貯蔵腐敗の発生が多いため、貯蔵腐敗と内部成分の関係を明らかにする。
[成果の活用面・留意点]
- 雪氷室型貯蔵庫内の平均庫温は、ダイコンの貯蔵期間にあたる冬季は1℃以下、その後も2℃以下であり、十分な低温環境が維持できる。庫内湿度はいずれの時期においても95%程度を維持できる。
- ダイコン貯蔵において、2月までは黒点の発生が少なく、健全割合も高く、外観品質が良く維持されたことから、雪氷室型貯蔵庫で2月まで貯蔵可能である。洗いダイコンを用いた場合、2月までは土付よりも黒点の発生が少ないが、腐敗、表皮変色の発生が多くなる。サイズはL,2Lいずれを用いても貯蔵性に与える影響は小さい(表1)。
- 2月までの貯蔵たいこんの内部品質やかたさなどの物理性は、ほとんど変化せず(表2)、加工実需者評価も高い。
- ナガイモ貯蔵において、秋掘り品は3月以降、黒点状の腐敗が多く発生する。しかし、春掘り品は入庫後、腐敗がほとんど見られないことから、秋掘り品を3月まで出荷し、その後春掘り品を入庫、出荷することにより、周年供給が可能である(表3)。内部品質に関して、秋掘り品を雪氷室型貯蔵庫で貯蔵すると糖が高まる。
- ナガイモの乾物率が15%以下になると、貯蔵中の腐敗が多く発生する(図1)。
- 以上をまとめて雪氷室型貯蔵庫におけるダイコン、ナガイモの貯蔵期間とした(表4)。
[成果の活用面・留意点]
- 農協、生産者団体等の雪氷利用型貯蔵庫(雪室、氷室等)における、加工向けダイコンの冬季貯蔵、および生食向けナガイモの周年貯蔵に活用できる。
- 高温年には冷熱源の雪氷が不足することがあるので、十分量の雪氷を確保する。
平成16年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「雪氷冷熱エネルギー利用によるだいこん、ながいもの長期貯蔵技術」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]研究課題名:秋どりダイコン・ナガイモの冷熱利用貯蔵技術の開発
予算区分:国費補助(地域基幹)
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:藤倉潤治
発表論文等:
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