水稲穂ばらみ期における障害型耐冷性極強系統「上系04501」「上系04502」
[要約]
穂ばらみ期耐冷性の強化を図るため、国内外の耐冷性品種の遺伝子集積を行ってきた結果、穂ばらみ期耐冷性が安定して高い水準の“極強”で、早晩性が“中生の早”の2系統を育成した。
[キーワード]
[担当]道立上川農試・研究部・稲作科
[連絡先]電話0166-85-4115
[区分]北海道農業・作物
[分類]科学・参考
[背景・ねらい]
北海道では品種改良により食味、品質の向上とともに穂ばらみ期における障害型耐冷性も向上したが、安定生産のためには現在の水準ではまだ不十分である。穂ばらみ期耐冷性がさらに強く、気象に左右されづらい安定生産が可能な品種の育成が生産者や実需者から強く望まれている。
本試験では穂ばらみ期耐冷性の強化を図るため、国内外の耐冷性品種の遺伝子集積を行ない、穂ばらみ期耐冷性が既存の品種よりも高い水準の中間母本を育成する。それらを今後、各育成地において穂ばらみ期耐冷性強化の育種素材として利活用する。
[成果の内容・特徴]
- 穂ばらみ期耐冷性極強候補系統群の中から安定して高い水準の“極強”の耐冷性を示す「上系04501」(交配組合せ:Silewah/キタアケ//ゆきひかり)および「上系04502」(同:永系88295-L/道北50号)を穂ばらみ期耐冷性極強系統として選定した。「上系04501」は既存の極強系統のなかで最も強い中生の「北育糯88号」並からやや優っており、「上系04502」は明らかに「北育糯88号」に優っている(図1)。
- 穂ばらみ期から開花期にかけての長期間の冷温と低日照条件下でも「上系04501」および「上系04502」の耐冷性は“極強”である。「上系04501」は「北育糯88号」に比べ、極めて強い耐冷性を示す(図2)。「上系04502」も「上系04501」には及ばないが、「北育糯88号」より明らかに耐冷性が強い(図2)。
- 「上系04501」および「上系04502」の穂ばらみ期耐冷性にはそれらの系譜上にある「Silewah」に由来する遺伝子が関与していると考えられるが、「中母農8号」が保持する「Silewah」由来の第3染色体耐冷性関連領域ならびに第4染色体に座乗する耐冷性遺伝子Ctb1、Ctb2を両系統では確認できない(表1)。
- 「上系04501」および「上系04502」は玄米特性、収量性、食味など不良な形質があるものの(表2)、穂ばらみ期耐冷性強化の育種素材として利活用できるものと判断する。
[成果の活用面・留意点]
- 「上系04501」および「上系04502」は穂ばらみ期における障害型耐冷性が従来の品種より強化された優良品種を開発するための交配母本として利用できる。
[具体的データ]
[その他]
寒地中北部向け早生、高度耐冷性、良食味及び直播栽培適性品種の育成
予算区分:指定試験
研究期間:1986〜2005年度
研究担当者:吉村徹、佐藤毅、沼尾吉則、佐々木忠雄、木内均、木下雅文、品田博史、粕谷雅志、相川宗嚴、前川利彦、平山裕治、菊地治己、田中一生、丹野久、新橋登、佐々木一男、田縁勝洋、吉田昌幸、前田博、菅原圭一、國廣康史
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