バレイショでん粉粕サイレージの飼料特性と泌乳牛への給与法

[要約]

バレイショでん粉粕サイレージはペクチンを約10%含み、消化性の高いエネルギー飼料で、カリウム含量が粗飼料よりも低い。でん粉粕サイレージは泌乳牛1頭あたり原物約10kg/日給与することで圧片トウモロコシの約2kg(原物)の代替として給与できる。

[キーワード]

バレイショでんぷん粕、サイレージ、カリウム含量、消失速度

[担当] 北海道農研・自給飼料酪農研究チーム
[連絡先] 電話 011-857-9260,電子メール seikajouhou@ml.affrc.go.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地、畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
バレイショでん粉製造副産物であるでん粉粕は道内で毎年10万t産出されているが、高水分で空気に触れると腐敗しやすく、また、飼料特性に基づく乳牛に対する給与技術が確立されていない等の理由から飼料利用は約4割にとどまっている。そこで、でん粉粕を自給飼料資源として活用するため、サイレージ化しその飼料特性を多面的に評価し泌乳牛への給与法を提示する。
[成果の内容・特徴]
  1. でん粉粕は高水分でかつサイレージ発酵の基質である単少糖類が少ないものの密封貯蔵すれば、乳酸菌を添加しなくても乳酸、酢酸のみからなる良質なサイレージが調製できる(図1)。
  2. 無添加のでん粉粕サイレージは、粗タンパク質含量が4%と穀類の半分以下で、繊維成分(ADFおよびNDF)含量は3-4倍と高く、穀類やイネ科牧草およびトウモロコシサイレージにはほとんど含まれていない水溶性繊維のペクチンが約10%含まれる(表1)。
  3. でん粉粕サイレージのリン(P)含量はわずかで、カリウム(K)含量は約0.7%で、穀類より高いもの粗飼料である牧草サイレージやトウモロコシサイレージよりも低い(表1)。
  4. でん粉粕サイレージのTDN含量は平均値で76%と査定され、エネルギー価は濃厚飼料並みに高い。第一胃内における消化速度は穀類より高い(図2)。
  5. でん粉粕サイレージを圧片トウモロコシ2kgの代替として給与飼料中の8%(乾物比)程度混合しても摂取量、乳生産は混合しなかった場合と変わらない(表2)。
  6. 以上の結果より、でん粉粕サイレージは消化性が高くかつ牧草サイレージやトウモロコシサイレージよりもカリウム含量が少ないエネルギー飼料であることが明らかとなり、圧片トウモロコシ2kgの代替として泌乳牛1頭あたり原物で8-10kg/日給与できる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果は、近隣にでん粉工場がある畑作酪農地帯で、泌乳牛向けでん粉粕サイレージを組み入れた自給飼料多給型の飼料メニューの設計を行う際に利用できる。
  2. ジャガイモ塊茎褐色輪紋病の病原ウイルスを媒介するジャガイモ粉状そうか病菌は、耐久体を形成し他の病原菌と比較して熱などに対する耐久性が高い恐れがあることから、病原を拡散させないためでん粉粕を給与した牛のふん尿堆肥は草地に還元し、当面畑地への還元を避ける。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 自給飼料の高度利用による高泌乳牛の精密飼養管理技術と泌乳持続性向上技術の開発
課題ID 212-g
予算区分 高度化
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 大下友子、青木康浩、秋山典昭、上田靖子、三谷朋弘、宮地慎
発表論文等