飼料用トウモロコシにおけるデオキシニバレノールの汚染実態と乳牛に及ぼす影響

[要約]

道内のトウモロコシサイレージ中デオキシニバレノール(DON)濃度は平均1.18ppm(n=245)であり、飼料安全法による許容基準値(<4ppm)を超えるものの割合は4%である。汚染は主に圃場立毛中にFusarium graminearumにより植物体全体で起こり、倒伏によりDON濃度が高まる危険性がある。許容値以下のDON含有飼料では乳量への影響はみられない。

[キーワード]

デオキシニバレノール、DON、F.graminearum、飼料用トウモロコシ

[担当] 道立畜試・環境草地部・草地飼料科、基盤研究部・病態生理科
[連絡先] 電話 0156-64-5321,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地
[分類] 技術・参考

[背景・ねらい]
酪農現場で乳牛の生産性阻害が懸念されているデオキシニバレノール(以下DONと略記)について、飼料用トウモロコシにおける汚染実態を明らかにする。また、DON汚染飼料の摂取が乳量に及ぼす影響および吸着剤による牛消化管内容液中DONの吸着効果を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
  1. エライザキット(NEOGEN社Veratox DON5/5)の値は公定法(HPLC法)による値と近似しており(n=38,r2=0.97)、トウモロコシサイレージ中DON濃度の測定が可能である。
  2. 道内のトウモロコシサイレージ中DON濃度は平均1.18ppm(n=245)であり、飼料安全法による許容基準値(<4ppm)を超えるものの割合は4%である。
  3. 飼料用トウモロコシの収穫時サンプルからはFusarium graminearum(以下F.g.)が103〜5CFU/g検出され、DON濃度と関連がある(図1-1)。F.g.はDON産生菌として道内に広く分布することが知られており本菌が飼料用トウモロコシにおけるDON汚染の原因と考えられる。
  4. 飼料用トウモロコシ植物体からのF.g.分離率は気温の高い7月下旬から9月上旬にかけて高まり、DON濃度は、気温がやや低下する9月上旬〜下旬にかけて高まる(図1-2)。
  5. F.g.とDONは共にトウモロコシ地上部各部位から分離・検出されるが、ともに子実で低い傾向があり、倒伏によりDON濃度が高まる危険性がある(表1)。
  6. 一方、DONはサイレージ発酵中には大きく増減しないので(図2)、DON汚染は圃場立毛中が中心であると考えられる。
  7. DON含有トウモロコシサイレージ(0.4〜4.6ppm)を給与している経産牛26頭のデータ(n=242)を解析したところ、飼料中のDON濃度と乾物摂取量の間だけでなく、DON摂取量と乳量との間にも関係が見られず(表2)、許容値内のDON含有飼料の摂取が乳量へ及ぼす影響は認められない。
  8. 吸着剤としてケイ酸アルミニウム300g、ベントナイト300g、タンニン酸アルブミン150gをそれぞれ単独で乳牛3頭に給与(1期8日間、2反復)し第一胃液のDON濃度を測定した結果、投与前と各期最終日のDON濃度の日内変動に処理間の差は認められず、これら吸着剤のDON吸着効果は少ないと考えられる。
[成果の活用面・留意点]
  1. トウモロモシサイレージにおけるカビ毒対策を考える上での参考となる。
  2. エライザキットを活用する場合にはサイレージでの精度が確認されているものを利用する。
[具体的データ]

 

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 デオキシニバレノールの発生要因と乳牛に及ぼす影響の解明
予算区分 道費
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 出口健三郎、湊啓子、飯田憲司、川本哲
発表論文等