酪農地域のふん尿利用を適正化する農家支援組織の育成・運営マニュアル

[要約]

農業試験場が農協職員などに対して年間7〜8日の実習を3年間実施して施肥管理技
術者を育成するカリキュラム及び、支援組織が酪農家のふん尿利用活動を支援する効率的な年間活動計画からなる酪農地域の圃場養分管理を適正化するためのマニュアルである。

[キーワード]

地域支援、ふん尿利用、養分管理、酪農

[担当] 根釧農試・研究部・草地環境科、経営科
[連絡先] 電話 0153-72-2004,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畜産草地、共通基盤・土壌肥料
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
北海道における酪農地帯の環境改善には、家畜ふん利用の適正化を地域全体で実践する必要がある。そこで、農業試験場が働きかけて近隣の農協を核とする農家支援組織(コントラクターを含む)を構築し、施肥管理技術者の育成カリキュラムと農家支援組織の年間活動計画を策定し、育成組織による施肥改善活動の支援による圃場養分管理の適正化を検証してマニュアルとしてとりまとめる。
[成果の内容・特徴]
  1. 農協等の職員を実践的な施肥管理技術者として育成するためには、作業の種類と草地の状態が季節毎に異なることを考慮して年7〜8日の実習を行い、受講者が単独で農家支援活動ができるように3年間にわたって段階的に指導するカリキュラムが有効である(表1)。このカリキュラムには、草地の窒素施肥量を決めるマメ科率を判定する草地区分、リン酸とカリ施肥量を決める土壌診断、ふん尿の成分分析、およびこれらに基づく施肥設計とふん尿利用計画の策定が含まれる。
  2. ふん尿利用の適正化を支援する地域において、農家支援組織は、酪農家の飼養頭数、面積、土地利用区分、土壌理化学性と施肥来歴等の調査を行った上で、各農家の施肥設計とふん尿利用計画策定作業を行い、施肥改善案を提示する。各農作業は個別の酪農家の事情に応じてコントラクターによる支援も含めて実行され、最後に各種農作業の実行を確認する年間計画に従って活動する(表2)。この年間活動計画の指導において、1年目は農業試験場が主体となって手本を示し、2年目以降は農家支援組織の施肥管理技術者が主体的に実施して、3年間で独自活動ができるようになる。
  3. 酪農家14戸、草地面積999haからなるモデル地域において、表1のカリキュラムと表2の年間活動計画による農家支援を行った場合、12戸の酪農家が一部または全草地に対して施肥改善案を受入れ(図1)、リン酸では施用量が大幅に低減し、窒素とカリでは適正施用量の圃場割合が増えて、草地の養分管理が適正な方向に変化した(図2)。このことから、農家支援組織の育成・運営マニュアルの有効性を確認できる。
[成果の活用面・留意点]
  1. マニュアルは本文13ページと資料集からなる冊子で、酪農地帯の指導機関が環境改善活動を組織的に遂行する場合の取組内容・手順ならびに期待される改善効果の根拠として利用される。北海道立根釧農業試験場ホームページから入手できる。
  2. 環境改善の必要な地域で、主体的に活動できる農協等の組織を核とし、協力的な農家の多い地域から活動を開始し、段階的に周辺地域に波及させることが効率的である。
  3. 施肥管理技術者は、農協等の農家支援組織内の人事異動を考慮し、3名以上育成することが望ましい。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 環境保全型家畜ふん尿循環利用システム実証事業
予算区分 国費補助
研究期間 2004-2006年
研究担当者 三枝俊哉、酒井治、原 仁
発表論文等