砕土装置付培土機によるばれいしょ早期培土栽培の生産性向上技術

[要約]

砕土装置付培土機による早期培土栽培は、慣行栽培に対して培土作業や収穫作業の省力化が可能であること、品種により規格内重が優ったことから、ばれいしょの生産性向上に有効な技術である。

[キーワード]

バレイショ、砕土装置付培土機、早期培土栽培、省力化、植付時耕盤破砕

[担当] 十勝農試・生産研究部・栽培システム科、作物研究部・畑作園芸科
[連絡先] 電話 0155-62-9835,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・畑作
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 省力化を目的に早期培土栽培が生産現場に導入されつつあるが、各種土壌での適応性、生育収量の特性や品種の適応性などは未検討である。また、種いもの下部に耕盤や踏圧が残るが、この部分を破砕することにより、更なる根域の拡大が可能である。
 そこで、砕土装置付培土機を利用した早期培土栽培による生産性の向上効果と品種適応性や栽植密度、種いも下部の耕盤破砕技術を検討し、ばれいしょの生産性向上をはかる。
[成果の内容・特徴]
  1. 砕土装置付培土機による砕土位置と培土形状を図1に示す。早期培土は慣行培土と比べて砕土率が同等か高く、土壌硬度が同等か低下し、硬度15mm以下の断面積は増加する場合が多い。多湿黒ボク土や細粒質褐色低地土では、培土時の土壌水分が高い場合に砕土率が低下する事例や、培土後2日以内に降雨があると硬度15mm以下の断面積が減少する事例がみられた。
  2. 砕土装置付培土機の作業能率は0.4ha/h程度で、慣行培土作業に対して0.4〜1時間/ha程度短縮する(表1)。早期培土栽培の収穫作業は、土塊混入量が減少するため収穫作業能率が向上する。収穫作業時間は慣行栽培に対して2時間/ha程度短縮する。
  3. 早期培土栽培の生育収量を慣行栽培と比較すると、萌芽期は遅れるが塊茎の初期肥大は優る(表2)。規格内率は、1個重が比較的小さい品種やストロンが長く緑化が発生しやすい品種で慣行栽培より高くなり、規格内重は同等か早期培土栽培が優る。早期培土栽培では、いも数型品種「マチルダ」は株間30cmで規格内重が最も低く、密植は適さないと考えられる。一方、いも重型品種「さやか」、「ホッカイコガネ」は疎植によって規格内重が大きく減少することから、疎植を避けるのが望ましい。
  4. 植付時に種いも下部の耕盤を破砕することにより、培土中央・下部における硬度15mm以下の断面積が増加し、上いも重、規格内重が増加する。土壌硬度の低下程度、硬度15mm以下の断面積などを考慮すると、ウイング形破砕刃(作用深20cm)が有効である。
  5. 以上の結果から、表3に早期培土栽培の生産技術体系の概要と栽培特性を示した。
[成果の活用面・留意点]
  1. 多湿黒ボク土や細粒質褐色低地土では、培土時の土壌水分が高い場合や培土後2日以内に降雨が予想される場合には、早期培土作業を避ける。
  2. 品種適応性および栽植密度は淡色黒ボク土における試験結果である。
  3. 植付時耕盤破砕技術は、多湿黒ボク土や細粒質褐色低地土で活用できる。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 高品質ばれいしょ生産を目指した省力培土・収穫技術
予算区分 受託
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 鈴木 剛、松永 浩、大波正寿、稲野一郎、梶山 努、白井和栄
発表論文等