いちご疫病の総合防除対策および疫病抵抗性簡易検定法

[要約]

採苗ほではもみがら採苗法を行い、本ぽではほ場の汚染程度と品種の抵抗性に応じて、還元消毒を実施することで疫病の被害を回避できる。また、開発した疫病の抵抗性簡易検定法は育種に利用可能である。

[キーワード]

いちご、疫病、抵抗性、還元消毒、検定法

[担当] 道南農試・研究部・病虫科、作物科
[連絡先] 電話 0138-77-8116,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・生産環境
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
北海道内で近年発生が急増しているいちごの疫病の発生実態を把握する。また、健全苗の生産技術、化学農薬および還元消毒の防除効果を検討するとともに、主要品種の抵抗性を評価し、これらを組み合わせた総合防除対策を構築する。さらに、抵抗性品種育成を推進するために、育種に利用可能な疫病の抵抗性簡易検定法を開発する。
[成果の内容・特徴]
  1. 発生実態調査
    発生地域は12支庁管内46市町村におよび疫病はほぼ全道的に発生している(図1)。道内における疫病発生の主体はPhytophthora cactorum によるものである。
  2. 薬剤および還元消毒による防除対策
    採苗ほ:露地採苗法では、薬剤処理を行っても子苗への疫病感染を防ぐことはできないため、疫病汚染ほ場においては、無病苗を採苗できる「もみがら採苗法」により採苗する必要がある。
    本ぽ:還元消毒(フスマまたは米糠1t/10a施用、耕起深20p)の防除効果が高い(図2)。A粉粒剤、Bくん蒸剤、C油剤(いずれも疫病に対して未登録)による土壌くん蒸処理も、還元消毒よりやや劣るものの防除効果が高い。メタラキシル粒剤(登録あり)は、効果が低いか無い。
  3. 主要品種の抵抗性評価
    汚染ほ場において一季成り14品種、四季成り6品種の疫病(P.cactorum)抵抗性検定を行い、判定した各品種の抵抗性を表1に示す。
  4. 以上の結果を取りまとめた、いちご疫病の総合防除対策を図3に示す。すなわち、採苗ほでは「もみがら採苗法」を行い、本ぽでは作付け品種の抵抗性とほ場の汚染程度(抵抗性弱品種を栽培した場合の発生程度)に応じて還元消毒を実施することにより疫病の被害を回避できる。
  5. 抵抗性簡易検定法の開発
    魚箱を用いた疫病抵抗性簡易検定法(表2)は、一季成り品種を汚染ほ場で検定した抵抗性と誤差1ランク以内で判定できる(表3)。本法は1〜2ヶ月で抵抗性を判定でき、省スペースであり、収穫作業を必要とせず省力的であることから、一季成り品種の簡易な疫病抵抗性検定法として育種へ利用が可能である。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本成果のうち、総合防除対策はいちご疫病発生ほ場における防除対策として、抵抗性簡易検定法は農業試験場における疫病抵抗性品種育成に活用する。
  2. A粉粒剤、Bくん蒸剤、C油剤は、いちご疫病に対して未登録である。
[具体的データ]

 

 

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 いちごの疫病に対する総合防除対策
予算区分 道費
研究期間 2003〜2006年度
研究担当者 三澤知央、福川英司、新村昭憲、中住晴彦
発表論文等 三澤ら(2006)北日本病害虫研報57:60-61