デオキシニバレノール汚染に対応した春まき小麦の赤かび病に対する薬剤防除対策

[要約]

発病とデオキシニバレノール汚染の関係解明と薬剤評価などの結果から、春まき小麦の赤かび病に対する薬剤防除対策として、効果の高い薬剤を開花始から1週間間隔で3回散布することが合理的である。本成果によって従来の防除対策と比較して散布回数が1回削減される。

[キーワード]

小麦、赤かび病、デオキシニバレノール、薬剤防除、Fusarium graminearum

[担当] 中央農試・生産環境部・病虫科
[連絡先] 電話 0123-89-2291,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・生産環境
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
デオキシニバレノール(以下、DONとする)の暫定基準値(1.1ppm)に対応するため、2003年に「春まき小麦のDON汚染低減にむけた当面の対策」を緊急的に策定し指導してきた。本研究ではDON汚染機作の解明に基づく合理的な薬剤防除対策を確立する。
[成果の内容・特徴]
  1. 北海道の春まき小麦の赤かび病の主要な病原菌はDON産生型のFusarium graminearumである。このことからニバレノール汚染のリスクは低いと考えられる。
  2. F. graminearumの感染により肥大が阻害され白色化する病徴を示す赤かび粒は発病穂で発生し、高濃度(概ね50〜300ppm)のDONに汚染されている。赤かび粒の発生と混入がDON汚染の主要因である。
  3. 赤かび粒の病徴を示さない外観健全粒にもDON汚染が認められる。その汚染程度とF. graminearum分離率には相関が認められる(図1)。このことから無病徴で感染した本菌がDONを産生し蓄積すると考えられる。
  4. 外観健全粒へのF. graminearumの感染率を発病穂と健全穂で比較すると、発病穂で高い(図2)ことから、感染は主に発病穂内における二次伝染によるものと考えられる。
  5. 上記2.〜4.より、DON汚染を効果的に抑制するためには発病穂率を低減させることが重要であり、そのためには感受性の高い開花期間の薬剤防除が有効であると考えられる。
  6. テブコナゾール水和剤F(2000倍)を開花始から一週間間隔で3回散布,4回散布,5回散布した場合、赤かび粒率および外観健全粒へのF. graminearumの感染に対する防除効果はほぼ同等であり、赤かび粒も含めた総体のDON汚染に対する防除効果もほぼ同等であった(表1)。
  7. 赤かび粒率、外観健全粒のDON汚染、および赤かび粒も含めた総体のDON汚染に対する防除効果を総合的に評価すると、メトコナゾール乳剤(1000〜1500倍)、テブコナゾール水和剤(2000倍)、チオファネートメチル水和剤(1500倍)およびイミノクタジン酢酸塩液剤(1000倍)の効果が高い。
  8. 上記5.〜7.より、春まき小麦の赤かび病に対する薬剤防除対策を表2に示す。
[成果の活用面・留意点]
  1. 春まき小麦の赤かび病に対する薬剤防除対策として活用する。
  2. 同系統の薬剤の連用とならないよう留意する。
  3. DONの暫定基準値あるいは農産物規格規程の赤かび粒率の基準値に対応するため、耕種的対策や調製を併せて行う。また、DONの自主検査は必須である。
[具体的データ]

 

 

 

[その他]
研究課題名 道産小麦の安全性・安定性向上試験
予算区分 受託
研究期間 2002〜2006年度
研究担当者 相馬 潤
発表論文等