水稲における石灰系下水汚泥コンポストの施用基準 |
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[要約] |
石灰系下水汚泥コンポスト(以下コンポスト)を水稲に施用する場合、基肥全層施肥で100kg/10aまでの施用であれば、水稲に悪影響を及ぼすことなく栽培でき、白米及び土壌に重金属の集積も見られない。また、コンポストを施用する際は、全層化学肥料窒素・リン酸をそれぞれ、コンポスト100kgあたり0.5kgまで減肥できる。 |
[キーワード] |
水稲、石灰系下水汚泥コンポスト、減肥可能量、重金属 |
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[背景・ねらい] |
□石灰系下水汚泥コンポストは、水稲への施用事例が少なく、知見も少ない。そこで、コンポストを水田に施用し、水稲の生育・収量・品質・土壌に及ぼす影響を明らかにするとともに、それらを考慮したコンポストの適正使用量、化学肥料減肥可能量を明らかにする。 |
[成果の内容・特徴] |
- コンポスト100kgあたり、窒素・リン酸を0.5kg減肥した時は、施用量200kg/10a以内では減収程度が小さいが、1.0kg減肥した時は、大きく減収する場合がある(図1)。よって、コンポスト100kgあたりの化学肥料窒素・リン酸減肥可能量は、0.5kgとすることが適当と考えられる。
- コンポストを施用すると初期生育が劣り、窒素・リン酸の吸収比率が後半に増加する傾向にある。施用量が100kg/10aでは、対照区と同等の収量・品質が得られるが、施用量が200kg/10aの場合は、タンパク質含有率が上昇する場合がある(図2、表1)。
- コンポストに含まれる窒素の単年施用時の利用率は、概ね2割程度である。
- 玄米及び白米の重金属濃度は、コンポスト400kg/10aを単年施用(玄米)した場合と、コンポスト200kg/10aを3年連用した場合(白米)のどちらにおいても対照区と同等である(表2)。
- コンポストを3年間連用した跡地土壌において、可溶性銅・亜鉛・ヒ素濃度に明らかな上昇は認められない。また、土壌中のカドミウム全含量は対照区と同等である(表2)。コンポスト100kg/10aを3年連用した場合には、跡地土壌の一般化学性に影響は見られないが、コンポスト200kg/10aを3年連用した場合には、カルシウム濃度が若干上昇する。
- 以上のことから、石灰系下水汚泥コンポストを水稲に施用する場合の施用量は、基肥全層施肥で100kg/10aを上限とし、全層窒素・リン酸はコンポスト100kgあたりそれぞれ0.5kgまで減肥可能であり、施用による重金属の蓄積も極めて少ない。
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[成果の活用面・留意点] |
- 全層施肥(コンポスト及び化学肥料)と側条施肥(化学肥料のみ)の組合わせ施肥を前提とする。
- 施用の際には定期的に土壌分析を行い、北海道施肥ガイド(P231)の「都市下水汚泥の農地施用基準」を遵守する。
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名 |
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水稲に対する石灰系下水汚泥コンポストの施用効果 |
予算区分 |
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受託 |
研究期間 |
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2004〜2006年度 |
研究担当者 |
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杉川陽一、安積大治、後藤英次、田中一生 |
発表論文等 |
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