根釧地方の黒ボク土採草地における乳牛スラリー連用条件下の窒素収支 |
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[要約] |
黒ボク土を充填したライシメーターに造成したチモシー単播草地において、乳牛スラリーを化学肥料に換算し、窒素、リン酸、カリウムを考慮した北海道施肥標準を遵守して連用することにより、十分な収量と、濃度・量ともにごく低い水準の窒素溶脱を少なくとも6年間維持することが期待できる。 |
[キーワード] |
チモシー、採草地、黒ボク土、ライシメーター、乳牛スラリー、溶脱、窒素 |
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[背景・ねらい] |
土地利用型酪農において、草地の生産性維持と環境保全を両立させる乳牛排泄物の農地還元が極めて重要である。その一方で、採草地に対する乳牛ふん尿の長期連用が環境に与える影響は十分に明らかにされていない。そこで、普通黒ボク土(黒色火山性土)を充填したライシメーターにチモシー単播採草地を造成し、全窒素として平均13〜40kg/10a/年(化学肥料窒素換算で4〜13kg/10a/年)のスラリーまたは平均14kg/10a/年の化学肥料を6年間連用し(表1)、窒素収支を明らかにする。 |
[成果の内容・特徴] |
- 降水量に対する浸透水量の割合は69〜82%であり、表面流出水は1%と少ない。
- 浸透水中の全窒素濃度は、2001年度にはSN40区で最高5mgN/L、年間加重平均で1.2mgN/Lの値を示したが、以後、全ての処理で加重平均0.5mgN/L未満の低い水準を維持する(図1)。
- 年間窒素溶脱量の6年間平均値はいずれの区でも0.18〜0.26kg/10aとごく少ない。
- 年間乾物収量は、標準施肥区では,早春に窒素肥料を施用しなかった2001年度を除き、おおむね900kg/10a(「北海道施肥ガイド」の目標収量である生草4,500〜5,000kg/10aにほぼ相当)程度の値を示す(図2)。スラリー施用系列における年間乾物収量はスラリー施用量に応じて増加し、SN40区では標準施肥区と同等以上の値で推移し、6年間平均で標準施肥区をおよそ3割上回る。また,SN13区では明らかに標準施肥区を下回る。SN26区では連用5年目以降、標準区と同等以上であり、6年間の平均で標準施肥区と同等の収量を示す。
- 全観測期間中における収穫と表層0〜10cm土層中の増加窒素量の合計は、標準施肥区では施用窒素の96%、スラリー施用区では同じく85〜91%である(図3)。また、スラリー施用区における未回収の施用窒素量は、アンモニア揮散量の推定値と良く一致する。なお、スラリー施用区の土壌における窒素の蓄積量は標準施肥区よりも明らかに多い。
- 実際の施用場面ではカリに規制され、スラリーの施用上限量はSN13区程度になることが多い。この場合、化学肥料で窒素を補填することになる。その補填量とスラリーの化学肥料換算窒素量との合計を北海道施肥標準量以内にすることにより、窒素の溶脱をごく低い水準に維持できる。
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[成果の活用面・留意点] |
- 採草地における施肥管理指導において、環境影響評価に関する参考になる。
- 充填した火山灰土壌は摩周系火山灰を母材とし、年間降水量は1,200mm程度である。
- 実際のスラリー施用に際しては、スラリーの窒素、リン酸、カリ含量に基づく施用限界量を遵守する。
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[具体的データ] |
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[その他] |
研究課題名 |
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寒冷寡照条件の畜産由来有機性資源の循環利用に伴う環境負荷物質の動態解明と環境負荷低減技術の開発 |
予算区分 |
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指定試験 |
研究期間 |
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1998〜2006年度 |
研究担当者 |
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甲田裕幸、木場稔信、松本武彦、三枝俊哉、寳示戸雅之、三木直倫 |
発表論文等 |
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