上川地域における春まき小麦「春よ恋」に対する尿素葉面散布効果と追肥要否判定

[要約]

開花期以降3回の尿素葉面散布追肥で、タンパク含有率が向上する。また、千粒重も増加し増収する。生育診断値(穂揃期の草丈(cm)×止葉直下葉葉色値)と推定粗子実重水準より、倒伏を抑えつつ、タンパク含有率を基準値に収めるための追肥要否基準を作成した。

[キーワード]

コムギ、春よ恋、タンパク、葉面散布、生育診断、葉色、草丈

[担当] 上川農試・研究部・畑作園芸科、栽培環境科
[連絡先] 電話 0166-85-4116,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・生産環境
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
上川地域における春まき小麦「春よ恋」に対する尿素葉面散布効果を検証し、子実タンパク含有率を基準値(11.5-14.0%)内におさめるため、穂揃期の生育診断による葉面散布要否基準を設定する。
[成果の内容・特徴]
  1. 標準施肥量(9kgN/10a)であっても、年次により収量と窒素吸収量は大きく変動し、タンパク含有率が基準値(11.5-14%)の下限に達しない場合がある(表1)。基肥窒素量を増減(6、12、15kgN/10a)すると、タンパク含有率も増減するが、基肥量の増減のみでタンパク含有率を安定的に基準値に収めることは困難である(表1)。
  2. 開花期以降に3回の葉面散布を行うことで、基肥窒素量によらずタンパク含有率は向上し、向上効果は平均1.2ポイント程度である。また、向上程度は、無散布区の含有率が低いほど高く、この傾向は、試験年次、土壌条件、前作にかかわらずほぼ一定である。
  3. 葉面散布3回で、千粒重が増加し、子実重が増加(無散布区比104%)する。ただし、無散布で倒伏程度1(少)以上の時、葉面散布により倒伏が1ポイント助長され、倒伏程度4(多)以上の場合には、子実重の増加は認められない(データ省略)。
  4. 子実重とタンパク含有率には、成熟期の窒素吸収量別に負の相関関係が認められる()。そのため、窒素吸収量と子実重が推定できれば、タンパク含有率の推定が可能である。
  5. 生育診断値(穂揃期の草丈(cm)×止葉直下葉葉色値)は、従来秋まき小麦の生育診断に使用されている止葉直下葉葉色値よりも、穂揃期窒素吸収量や成熟期窒素吸収量との相関が高く、生育診断に有効である(表2)。
  6. 当年の出穂期等の生育状況から推定される粗子実重水準と上記の生育診断値から作成した追肥要否基準を表3に示す。この追肥要否基準に基づき、「春よ恋」に対し、現行の標準基肥量に加え3回の尿素葉面散布を行うことで、タンパク含有率の平準化と収量性の向上を図ることができる。
[成果の活用面・留意点]
  1. 本試験は上川管内の褐色森林土、褐色低地土、グライ土における春まき栽培での試験結果である。
  2. 上位葉の黄化症状が著しい場合、葉面散布効果が低い可能性がある。
[具体的データ]

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 北海道における春播小麦有望系統の高品質多収肥培管理技術の開発
予算区分 国費受託(ブランドニッポンI系)
研究期間 2003〜2005年度
研究担当者 佐藤三佳子、五十嵐俊成、櫻井道彦、鈴木和織、柳原哲司
発表論文等