有機栽培たまねぎの生産安定化

[要約]

有機栽培たまねぎで収量確保と病虫害軽減を可能とする生産安定化技術(適品種と作型、有機物の施用法および混和法,手押し除草機の効果)と土壌化学性の目標値を検討して栽培モデルを提案する。

[キーワード]

有機栽培、たまねぎ、栽培モデル

[担当] 北見農試・生産研究部・栽培環境科、病虫科、作物研究部・畑作園芸科部
[連絡先] 電話 0157-47-2146,電子メール seika@agri.pref.hokkaido.jp
[区分] 北海道農業・水田・園芸作
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
近年、有機農産物の需要は高まり、有機栽培に取り組む農家が増加しつつあるが、栽培指針等は明らかにされていない。そこで,有機栽培たまねぎの生産安定化に有効な各種技術(品種、有機物の施用および混和法、除草方法)を検討し、栽培モデルを策定する。
[成果の内容・特徴]
  1. 有機栽培ではネギアザミウマによる食害程度が大きい。食害程度は極早生、早生品種および早期は種作型で少ない。また、前年秋施肥を基本とする有機栽培では6月中旬以降に土壌中の無機態窒素が少なく推移するため、とりわけ晩生品種では生育が抑制され、収量が慣行区に比べて劣る(表1)。したがって、有機栽培の生産安定化には早期播種作型が有効であり、品種は抽台しにくい中生品種より早いものを選定する。
  2. 作土の熱水抽出性窒素含量が7〜8mg/100g以下の圃場は、生育収量が不安定であり、または、堆肥併用や春補肥(豚糞ペレット等を4月中旬から5月上旬に50〜120kg施用)により土壌の無機態窒素量が増加して増収する。一方、熱水抽出性窒素含量がこれ以上の圃場では生育・収量は安定している。したがって、熱水抽出性窒素含量7〜8mg/100gを有機栽培たまねぎの生産を安定化するために満たすべき当面の土壌化学性の目標値とする(表2)。
  3. タイン型手押し除草機による処理効果は雑草生育が少ない早期の処理、除草回数の増加により高まる(表3)。除草時間は手取り除草に比べ1/4〜1/2に短縮される。
  4. 生産安定化に有効なこれらの技術を組み入れた有機たまねぎの栽培モデルを図1に示す。
[成果の活用面・留意点]
  1. 供試した農家圃場は有機JAS認定圃場(12年以上経過)で、北見農試有機対応圃場は平成15年夏に草地から転換した圃場である。
  2. 春補肥は豚ぷんペレット等で120kg/10a(窒素無機化量で1.5kg/10a程度)以下とし、4月中旬か ら5月上旬に施用混和する。タネバエ等の発生が多い地帯では、特にこれを遵守する。
  3. 土壌診断に努めるとともに、有機質肥料の過剰施用を行わない。
[具体的データ]
 

 

 

 

 

[その他]
研究課題名 たまねぎの有機栽培における生産安定化
課題ID  
予算区分 農政部事業
研究期間 2004〜2006年度
研究担当者 中村隆一、古川勝弘、西田忠、赤司和隆、志賀弘行、池谷美奈子、美濃健一、古館洋明
発表論文等