砂質客土埋設工法による泥炭土水田の米粒タンパク質低減技術
[要約]
泥炭土水田において、砂質客土材を作土下に埋設する砂質客土埋設工法は、米粒タンパク質含有率の低減効果が安定的に発現する。表土削剥後に深さ25cmに客土材を埋設すると収量低下がない。プラウによる反転埋設簡易施工では客土厚が不均一となる。
[キーワード]
[担当]道立中央農試・生産研究部・水田・転作科
[代表連絡先]電話0126-26-1518
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
米粒タンパク質含有率の低減化を図るため、砂質客土材を作土下に埋設する新たな土層改良である砂質客土埋設工法を開発し、泥炭土水田で良食味米を安定的に生産できる基盤整備方法を提案する。
[成果の内容・特徴]
- 泥炭土水田において砂質客土材を作土下に埋設することにより、米粒タンパク質含有率が低減する。これは埋設した客土層により水稲根域を制限し、下層泥炭からの窒素吸収を抑制することで、出穂期以降の窒素吸収量が低下することによる(表1)。客土材の埋設深は、土壌表面から15cm深で生育収量の低下がみられたことから25cm深が妥当である。
- 砂質客土を表土削剥後に埋設施工したほ場は、透水性が良好で堅密な客土層が安定的に形成される(図1)。また、出穂期以降の窒素吸収量が低下し、米粒タンパク質含有率が3カ年平均で無処理区に比べ0.7%低下する。施工後14年経過後のほ場においても、米粒タンパク質含有率の低下が持続することから、長期間における安定的な効果が期待できる(表2)。
- 客土材を置土し、プラウにより反転埋設する簡易施工は、施工後の客土層厚が不均一となり(図1)、米粒タンパク質含有率の低減効果は判然としない。
- 適用ほ場は米粒タンパク質含有率が高まる傾向にある泥炭土水田とし、施工方法は表土を削剥して砂質客土材を厚さ5〜10cm程度で敷き均し、表土を戻す方法が適する。砂質客土埋設工法の施工条件は表3のとおりである。
[成果の活用面・留意点]
- 本工法の施工ほ場では客土層により根域を制限しているため、干ばつの影響を受けやすい。そのため早期落水を避け、登熟期間の土壌水分を適正に維持する。
- 心土破砕の施工は極力避け、排水対策は暗渠排水と溝切り等で対応する。
- 窒素供給力が低いほ場では肥料切れをおこさないよう施肥設計に留意する。
- 本工法については土地改良事業での活用が期待できる。
- 畑利用の為に埋設した客土層を撹拌した場合、水稲作付時のタンパク質含有率低減効果は消失する。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名及び区分
「砂質客土埋設工法による泥炭土水田の米粒タンパク質低減技術」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:多様な米ニーズに対応する品種改良並びに栽培技術の早期確立
予算区分:受託
研究期間:2004〜2007年度
研究担当者:塚本康貴、北川巌、竹内晴信
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