導入ぶどう4品種・系統の北海道における特性
[要約]
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導入ぶどう醸造用2系統、生食用2品種の北海道における特性を検討した。醸造用「山梨38号」「山梨44号」は、耐寒性がある赤ワイン用として、生食用「サニールージュ」は、果粒が大きく食味に優れる種なしぶどうとして、有望である。
[キーワード]
- ブドウ、ワイン、ジベレリン、種なし、品種特性
[担当]道立中央農試・作物研究部・果樹科
[代表連絡先]電話0123-89-2001
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 現在道内で栽培されるぶどうのうち、醸造用では高品質で耐寒性の強い品種、生食用では需要の低下が著しい「キャンベルアーリー」に代わる良食味品種が求められている。そこで道外で育成されたぶどう品種・系統について、栽培特性・果実品質・耐寒性などの特性を明らかにし、北海道に適応する品種を選定する。
[成果の内容・特徴]
- 「山梨38号」は10月中下旬に収穫できる赤ワイン用の醸造専用系統である。果汁糖度は18〜19%、酸度は1.2g/100ml程度で、やや高い。酒質は、標準品種並の酸味で、酒色はやや薄い。官能評価では、‘バランスがよい’などの評価がされた。耐寒性は‘やや強’であり、果実品質・酒質が良好であることから有望な系統である。(表1、4)
- 「山梨44号」は10月中下旬に収穫できる赤ワイン用の醸造専用系統である。果汁糖度は約19%、酸度は1.2g/100ml程度で、やや高い。酒質は、標準品種と比べ酸味がやや強く、酒色は濃い。官能評価では、‘しっかりした味わい’などの評価がされた。耐寒性は‘強’、収量は「セイベル13053」並と多く、果実品質・酒質が良好であることから有望な系統である。(表1、4)
- 「サニールージュ」は果皮は赤紫色、満開期と満開10日後のGA処理(各25ppm)で無核化する種なし品種。樹勢はやや強い。収穫期は仁木町露地栽培で9月20日前後。露地栽培も可能だが、裂果が多い年もあることからハウス栽培が有効である。糖度は17〜18%程度で「キャンベルアーリー」より明らか高い。酸度は0.6g/100ml程度。果粒重は5〜6g程度で「キャンベルアーリー」よりやや大きい。適度な香りがあり食味はかなり良く品質が優れることから、種なしぶどうとして有望な品種である。(表2、3、4)
- 「甲斐美嶺」は果皮が黄緑色、満開期と満開10日後のGA処理(各25ppm)で無核化する種なし品種。樹勢は強い。収穫期は仁木町露地栽培で9月末〜10月始め頃。開花直前〜開花始期に花穂先端を10cm程度残すように整房すると良形の房になる。糖度は18%程度、酸度は0.7〜0.8g/100ml程度。果粒重は4g程度。種なしで食味は良く品質が優れるが耐寒性がやや弱い。(表2、3、4)
[成果の活用面・留意点]
- ぶどう産地における品種導入において活用する。
- 「山梨38号」「山梨44号」は全道の醸造用ぶどう栽培地域で栽培可能である。「サニールージュ」はハウス栽培を基本とし、全道の生食用ぶどう栽培地域で栽培可能である。
- 冬期は枝おろしを行う。着果過多などで耐寒性が低下しないよう注意する。また、生食用2品種はべと病の防除を行う必要がある。
- 醸造用系統の「山梨38号」は「ビジュノワール」として出願公表中であり、「山梨44号」は品種登録準備中であるため、苗木の販売までには数年を要する。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「ぶどうの品種特性」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:ぶどう新品種育成・「種なしぶどう」の品種選定と高品質果実生産技術の確立
予算区分:道費
研究期間:2000〜2007年度
研究担当者:来嶋正朋、内田哲嗣、平山裕治
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