乳牛における分娩前の飼養管理方法の改善による介助分娩の低減
[要約]
-
乾乳時までにBCSを3.5以上にならないように調整することおよび乾乳後期用飼料への移行を分娩予定の概ね4週前とし、分娩介助基準を設定・遵守するとともに、分娩前のBCSが3.5以上の経産牛には分娩前に糖蜜飼料を給与することで介助分娩が低減する。
[キーワード]
- 乳牛、分娩、介助、BCS、糖蜜、難産
[担当]道立根釧農試・研究部・乳牛繁殖科
[代表連絡先]電話0153-72-2004
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
- 難産および介助分娩が繁殖成績を低下させることをこれまで明らかにしてきた(根釧農試,2004)。ところが、推奨される分娩前の飼養管理方法が分娩状況に及ぼす効果は実証されていないため、介助分娩あるいは不要な介助で生じた難産が発生している。本試験では、乾乳後期用飼料への移行時期および分娩管理方法が介助分娩の低減に及ぼす効果を明らかにするとともに、分娩前の糖蜜飼料給与により介助分娩の低減を目指す。
[成果の内容・特徴]
- 乾乳後期用飼料への移行時期を分娩予定2週前から4週前に改善することで、初産牛の難産発生率は32.3%から13.3%に減少する(図1)。また、二次破水発見後すぐに分娩介助を行っていた基準を、二次破水発見後に胎子や産道に異常がないことを確認し、初産牛で約3時間、経産牛で約2時間の観察をしつつ、介助の必要性を判断するなどの分娩介助基準(図2)を設定して遵守する。このことにより、無介助分娩率は初産牛で33.3%から56.3%に、経産牛で65.1%から77.2%に増加し、さらに経産牛の難産発生率は11.1%から4.7%に減少する。
- 分娩予定4週前のボディコンディションスコア(BCS)が3.25以下の経産牛は、無介助分娩率が94.4%とBCS3.5以上の経産牛の67.9%より高い傾向がある(表1)ことから、介助分娩を低減するためには乾乳時までにBCSが3.5以上にならないように調整する。
- 牧草サイレージと濃厚飼料(乾物比80:20)の混合飼料を基礎飼料とする牛群における分娩予定1週前からの1kg/日の糖蜜給与は、初産牛では差はなかったが、BCS3.5以上の経産牛では給与区の無介助分娩率が93.8%と対照区の64.3%と比較して高い傾向がある(表2)。また、給与区では難産が発生しない。これらのことから、経産牛においては分娩前のBCSが3.5以上の場合に、分娩前の糖蜜飼料給与により介助分娩が低減する。
[成果の活用面・留意点]
- 酪農場で介助分娩を低減するために利用する
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「乳牛における分娩前の飼養管理方法の改善による介助分娩の低減」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:乳牛の自然分娩促進による繁殖改善技術
予算区分:道費
研究期間:2004〜2007年度
研究担当者:松井義貴、草刈直仁、小山 毅、中村正明、大滝忠利、出岡謙太郎、南橋 昭
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