パン用春まき小麦「はるきらり」の施肥体系
[要約]
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パン用春まき小麦「はるきらり」は、基肥窒素量を12kgN/10aを上限に「春よ恋」より3kgN/10a程度増肥し、更に後期追肥を行うことで、収量とタンパク含有率を確保できる。初冬まき栽培では「ハルユタカ」の栽培体系を基本とし、加えて春まき栽培同様に後期追肥を行う。
[キーワード]
- コムギ、はるきらり、タンパク質含有率、春まき、初冬まき、後期追肥
[担当]道立上川農試・研究部・畑作園芸科、道立中央農試・作物研究部・畑作科、基盤研究部・農産品質科、道立北見農試・作物研究部・麦類科
[代表連絡先]電話 0166-85-2200
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・普及
[背景・ねらい]
- 北海道における春まき小麦は、穂発芽や倒伏などの障害により、品質や収量の年次・地域変動が大きく、実需者からは安定した生産物供給が求められている。パン用春まき小麦「はるきらり(北見春67号)」は、障害耐性や製パン性に優れた新品種である。しかし、現行基幹品種である「春よ恋」とは栽培特性が異なるため、「はるきらり」に適した高品質安定栽培法の確立を目指し、肥培管理技術を検討する。また、同時に初冬まき栽培適性について検討する。
[成果の内容・特徴]
- 「はるきらり」のタンパク質含有率は「春よ恋」より約1ポイント低く、安定的に基準値(11.5%)を達成するには、タンパク質含有率向上のための施肥対応が必要である(表1)。倒伏が著しくなる窒素吸収量は、「春よ恋」より3kgN/10a程度多い16kgN/10a(子実重600kg/10a以上)である。
- 基肥窒素量12kgN/10a以上では、子実重・タンパク質含有率の向上が頭打ちとなる。また、基肥窒素量が12kgN/10aを越えると、施用した窒素が圃場に残存する可能性が高い。以上のことから、基肥窒素量は12kgN/10a程度が上限である(表1)。
- 止葉期以降の後期追肥を行うことで、タンパク質含有率は向上し、子実重も増加する。上川地域では、開花期以降3回の尿素葉面散布(1回につき0.92kgN/10a)、道央地域では同4回の葉面散布または止葉期の硫安表面施用(4kgN/10a)でタンパク質含有率が1ポイント程度向上する(表2)。
- 基肥窒素量の増肥、葉面散布、硫安表面施用の方法にかかわらず、タンパク質含有率の向上に伴い、生地物性は向上し、パン体積も増加する。この時のパン体積の増加程度は「春よ恋」よりも大きい(図1)。
- 初冬まき栽培では、「ハルユタカ」の標準施肥量(融雪期10kgN/10a+止葉期6kgN/10a)を基本とし、春まき栽培と同様に、開花期以降3〜4回の尿素葉面散布を行うことで、タンパク質含有率を確保する(表3)。
- 以上の結果から、「はるきらり」の施肥体系を表4に示す。
[成果の活用面・留意点]
- 本成績は全道の春まき小麦栽培地帯に適応し、「はるきらり」栽培に当たっての基本的な栽培技術として利用する。
- 播種期、播種量、病害虫防除等は、現行の春まき小麦栽培法に準ずる。
- 春まき栽培で収量水準が600〜660kg/10a(「春よ恋」では600kg/10aに該当)となるような多収圃場では、耐倒伏性とタンパク質含有率を安定的に両立させることが難しく、本栽培法によってもパン用小麦の基準値11.5%に達しないことがある。
- 後期追肥を行うことにより、成熟期が1日程度遅れることがある。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「パン用春まき小麦「はるきらり(北見春67号)」の高品質安定栽培法」 (普及推進)
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:北海道における春播小麦有望系統の高品質多収肥培管理技術の開発
新ランク区分に対応した小麦有望系統の高品質安定栽培法の確立
現地選抜による道央以南向け高品質春まき小麦の開発促進
予算区分:国費受託(ブランドニッポンI系)、民間受託、道費
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:佐藤三佳子、神野裕信、佐藤導謙、奥村理、阿部珠代、中道浩司、佐藤奈奈、五十嵐俊成、櫻井道彦、鈴木和織
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