湿原植生群落で簡易に正確な蒸発散測定が可能なライシメータ法
[要約]
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コンテナを用いたライシメータ法による蒸発散測定法を開発した。本方法で求める蒸発散の値は、微気象学的手法から算出した値とよく近似し、湿原ミズゴケ群落の蒸発散を評価するための、簡易にかつ正確な測定手法である。
[キーワード]
- 蒸発散、コンテナ、ライシメータ法、高層湿原、ミズゴケ群落
[担当]北海道農研・寒地温暖化研究チーム、北海道大学
[代表連絡先]電話011-857-9260、電子メールseika-narch@naro.affrc.go.jp
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]研究・参考
[背景・ねらい]
- 北海道には湿原が多く存在するが、原植生ではないササなどの繁茂により荒廃が進んでいる。この植生変化は、湿原の水環境を大きく変える。その要因の一つである蒸発散の把握は、湿原植生復元の見地からも重要である。蒸発散の測定は、主に、微気象学的手法を用いて行われる。しかし、この手法は、高額な測定機器や電源を必要とするため、誰もが、どこでも測定出来るという手法ではない。本研究では、湿原における蒸発散速度を評価するため、簡易に、しかも安価で測定する方法として、コンテナを用いたライシメータ法を考案した。
[成果の内容・特徴]
- ライシメータ法は、植生群落を湿原から切り出し、縦30cm、横40cm、高さ30cm程度のコンテナに入れる(図1)。蒸発散で失われる水はマリオット管から供給され、その水位低下量から蒸発散を測定する。一週間に一度はマリオット管の水位低下量を測定する。ライシメータ内の水位調整は、マリオット管に設ける吸気口の位置によって調整する。降雨によるライシメータ内の水位上昇を防ぐため、コンテナに穴を開け越流口を設ける。ライシメータは、一つ数千円程度で作成可能であり、測定終了後は、切り出した試料をそのまま湿原に戻すことにより、ダメージを極力抑えることが出来る。
- ライシメータ法による蒸発散の季節変動は、コンテナ内水位が-5cmの場合も、-20cmの場合も、ともに、ペンマン法で算出した値によく一致する(図2(b))。また、ライシメータ法の平均蒸発散速度は、3.0 mm d-1(設定水位-5cm)、2.6 mm d-1(設定水位-20cm)で、ともに、ペンマン法で算出した平均蒸発散速度2.9 mm d-1によく近似した値が得られる。ミズゴケ群落の地下水位はライシメータ内の設定水位である-20cmより高く推移し、平均-7cmであった。(図2(a))。ミズゴケ群落では地下水位の変動範囲内で地下水位を設定していれば蒸発散の測定が可能である。
[成果の活用面・留意点]
- 本調査のミズゴケ群落は、イボミズゴケが主体で、スゲ類も多く存在するが、根からの吸水が蒸発散に大きく寄与する植物は含まれていない。
- 地下水位が、コンテナの高さである30cm以内で変動する地点を適応対象地点とする。
- マリオット管の減水程度を把握して水を足す必要がある。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名:寒地における気候温暖化等環境変動に対応した農業生産管理技術の開発
課題ID:215-a
予算区分:公害防止
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:永田 修、長谷川周一(北海道大)、藤本敏樹(北海道大)、鮫島良次
発表論文等:藤本ら、(2006)土壌の物理性、103:39-47
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