小型バッチ式初乳用加熱装置(60℃30分)の殺菌性能と加熱初乳による免疫賦与効果
[要約]
60℃30分の加熱処理により、初乳中の黄色ブドウ球菌等の病原性細菌は顕著に減少する。初乳中免疫グロブリンG濃度は軽度に減少する場合があるが、子牛に対す る免疫賦与効果は非加熱初乳と同等である。
[キーワード]
小型バッチ式初乳加熱装置、病原性細菌、免疫グロブリンG
[担当]道立根釧農試・研究部・乳質生理科
[代表連絡先]電話0153-72-2116
[区分]北海道農業・畜産草地
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
平成19年度研究成果情報・北海道農業(P128-129)に報告した大型循環式初乳用加熱装置(加熱条件:63℃30分、処理量:60L)と処理量、攪拌方式および加熱条件の異なる小型バッチ式初乳用加熱装置(60℃30分、3〜12L)の殺菌性能と加熱初乳の子牛への免疫賦与効果を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
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小型バッチ式初乳用加熱装置(パスチャライザーMAM12A:オリオン機械株式会社 製、一回当たり処理量:3〜12L)を用いた処理(60℃30分)により、黄色ブドウ球 菌、環境性連鎖球菌および大腸菌いずれも、加熱前の初乳中菌数が106
CFU/ml以上の場 合は、加熱終了時およびそれに続く子牛への給与のための40℃1時間保持後に105 分 の1以下に減少する。加熱前菌数が106CFU/ml未満の場合には加熱終了時、40℃1時間 保持後ともに検出限界(5CFU/ml)未満となる。
また、加熱終了後に続く40℃1時間保持による菌数の顕著な増加は認められない(表1)。 -
60℃30分の加熱処理により、平均初乳中免疫グロブリンG(IgG)濃度は47.9mg/ml から45.7mg/mlと5%程度の軽度な減少を示すが、9試料のうち4試料については変化 は認められない(表2)。
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60℃30分の加熱処理を受けた初乳を給与された新生子牛の出生後3日目の平均血清 IgG濃度は15.4mg/mlで、非加熱処理初乳を給与された子牛の15.5mg/mlと同様の濃度を 示す。IgGの吸収率にも加熱による影響は認められない(表3)。
[成果の活用面・留意点]
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加熱処理を行う場合でも、初乳を衛生的に搾乳するとともに、加熱までの保存中微生 物汚染・増殖が起こらないよう、容器の衛生的管理、保存温度・時間等に十分配慮する。
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本初乳用加熱装置を用いた加熱により、初乳中の病原性微生物が完全に死滅しない場 合があることに留意し、加熱終了後、30ないし40℃保持時間(30分ないし1時間)経 過後は速やかに子牛に給与する。給与できない場合は初乳を冷蔵あるいは冷凍
保存する。
- 加熱容器は使用毎に洗浄、乾燥させる。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「小型バッチ式初乳用加熱装置(60℃30分)の殺菌性能と加熱初乳による免疫賦与効果」(指導参考)[具体的データ]
[その他]
研究課題名:初乳用熱処理器の殺菌性能と免疫抗体への影響
予算区分 :受託(民間)
研究期間 :2008年度
研究担当者:平井綱雄、高橋雅信
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