育苗時使用農薬の後作物への残留リスク評価とELISAキットの野菜への適用性


[要約]

[キーワード]

[担当]道立中央農試・環境保全部・農業環境科
[代表連絡先]電話0123-89-2582
[区分]北海道農業・生産環境
[分類]技術・参考


[背景・ねらい]

[成果の内容・特徴]

  1. 調査対象とした農薬A〜Kの11剤のうち、育苗時使用基準の上限量を面積換算した処理量(以下、「最大量」)で7剤はほうれんそう可食部中の残留濃度が基準値を明らかに下回り、また、残り4剤のうち残留基準値が1ppm以上であるA、BおよびDについては最大量の1/10処理で残留濃度は基準値と同程度かやや下回る程度である。
  2. Dの変化生成物(D')およびJはほうれんそう可食部の残留基準値が極めて低く、最大量の1/100の処理量でもほうれんそう可食部の残留濃度は基準値を超過する(図1)。また、これらA、B、D、D'およびJは土壌分解が低濃度域で遅い傾向が認められる。
  3. これらの成分は水溶解度が大きい、親水性が高い、分子量がやや小さい等の特徴があり、作物に吸収移行しやすい傾向がある。さらに後作物における残留基準値が極めて低い場合に育苗時使用農薬による後作物残留リスクが高まる(表1)。
  4. ELISAキット分析による添加農薬の回収率は農薬成分と野菜の組み合わせによって異なる(表2)。ELISAキットの分析範囲に比べて野菜の残留基準値が高い場合には添加回収率は100%に近づく傾向がみられる。これはキットの測定範囲まで抽出液を希釈すると妨害成分も同時に希釈されるためと考えられる。
  5. 一方、たまねぎやねぎでは、回収率がかなり高くなる場合がある。また、特にマラチオン測定キットは測定下限の濃度が高く、野菜の残留基準値からみて適用できない野菜が多い(表2)。しかし、ほとんどのELISAキットの適用性は高く、スクリーニング検査、モニタリング調査に有効である。

[成果の活用面・留意点]

  1. 後作物への残留リスク評価に関する試験は直接土壌に薬剤を処理したモデル試験である。農薬の使用にあたっては登録内容を遵守すると共に土壌に直接処理しないように注意する。
  2. 本成績の育苗時使用農薬の後作物残留調査にはほうれんそうを供試した。
  3. ELISAキットは基準値に対応していない農薬・野菜の組み合わせを除き、野菜の市場出荷前のスクリーニング検査や産地におけるモニタリング調査に活用可能である。
平成20年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「育苗時使用農薬による後作物への残留リスク評価とELISAキットの野菜への適用性」(指導参考)

[具体的データ]

[その他]




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