簡易有効積算気温を利用した成苗ポット育苗における育苗日数の適正化
[要約]
簡易有効積算気温は成苗ポット苗の生育状況を的確に示し、水稲「ななつぼし」では北海道水稲機械移植栽培基準値である草丈 10〜13cm、葉数 4.0以上、地上部乾物重 3.0〜4.5g/100本に430℃(育苗日数29〜37日)で達する。
[キーワード]
水稲、成苗、苗形質、育苗日数、簡易有効積算気温、ななつぼし
[担当]道立中央農試・技術普及部
[代表連絡先]電話0123-89-2589
[区分]北海道農業・水田・園芸作
[分類]技術・参考
[背景・ねらい]
北海道水稲機械移植栽培基準(成苗ポット;育苗日数35〜40日で草丈10〜13cm、葉数4.0以上、地上部乾物重3.0〜4.5g/100本、以下「栽培基準」)に対して育苗日数の延長に伴う苗の老化が懸念されている。そこで20〜35日育苗において、成苗ポット育苗した苗の形質と生育、収量および品質の関係を検討する。その結果を基に簡易有効積算気温が苗の生育状況を的確に示し、不必要な育苗日数の延長回避による育苗作業労力の削減と健苗育成の観点から、育苗日数の適正化を図る。
[成果の内容・特徴]
- 35日育苗は栽培基準に対して、乾物重が4.9g/100本で栽培基準値を超えている。一方、育苗日数を短縮した30日育苗でも葉数が0.5葉程度少ないが、他の形質は栽培基準に達し(図1)、夜間に二重被覆のハウス温度管理を行った25日育苗でも同様の生育を示す。出穂期、成熟期は育苗日数を35日から5〜10日短くしても遅れは1〜3日である。収量および品質についての差はないことから、栽培基準の35〜40日よりも短い育苗日数で栽培基準の苗形質に達する。
- 次に適正な育苗日数を知るために播種翌日から移植までの育苗ハウス内の簡易有効積算気温(日最高・最低平均気温に対する簡易有効気温の積算値)と移植時の苗形質の関係を見たところ、育苗日数よりも密接な関係が認められる(図2、3)。
- 430℃の簡易有効積算気温で草丈、葉数、地上部乾物重が北海道水稲機械移植栽培基準(成苗ポット)の範囲内となり、その時の育苗日数は29〜37日となる(表1)。不必要な育苗日数の延長回避による育苗作業労力の削減と健苗育成の観点から、成苗ポット育苗における「ななつぼし」では、播種翌日から移植までの簡易有効積算気温430℃(育苗日数29〜37日)で北海道水稲機械移植栽培基準に示す苗形質に達することを勘案して播種日を設定する。
[成果の活用面・留意点]
- 成苗ポットにおいて育苗作業労力の削減と健苗育成が図られる。
- 本成績では5月25日前後に移植を行っていることから、育苗日数の調整には移植を早めるのではなく播種時期を通常よりも遅らせることで対応する。
- 本成績は中生種「ななつぼし」を供試して成苗ポット育苗での空知管内における適応性を検討したものである。
平成21年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分
「簡易有効積算気温を利用した成苗ポット育苗の育苗日数の適正化」(指導参考)
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:食の安全・安心の確保に対応した施設園芸作のポジティブリスト制度対応
予算区分:外部資金(産学官連携経営革新技術普及強化促進事業)
研究期間:2007〜2009年度
研究担当者:古原洋、安積大治、丹野久、内山誠一、中住晴彦、飯田修三、木俣栄、池田信、川口招宏、渡邊祐志、乙部裕一、上野達、中本洋
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